Nine Inch Nails (ナイン・インチ・ネイルズ)
最終更新2020年9月23日
Nine Inch Nails (ナイン・インチ・ネイルズ)のアルバム紹介
Nine Inch Nails (ナイン・インチ・ネイルズ)の概要
Nine Inch Nailsはバンドではなく、トレント・レズナーの別名だと思ってもいいだろう。
メンバーやスタッフは流動的で、音楽製作はトレント・レズナー主導で行われる。
NINはオハイオ州クリーヴランドで87年頃にスタートしている。
89年にはJesus And Mary Chainやピーター・マーフィーらと全米をツアーし、秋にインディーレーベルTVTからPretty Hate Machineでアルバムデビュー。
当時はMinistryやSkinny Puppyなどのインダストリアルと呼ばれる音楽にカテゴライズされることが多かったが、インダストリアル界隈からは単なるポップ・バンドとの批判があった。
Nine Inch Nails 26曲
日本盤のリリースは無い。
そして91年夏、第一回ロラパルーザに参加したことが大きなブレイクに繋がった。
ロラパルーザでの怒りに満ちたステージは多くの人が度肝を抜かれたようで、アルバムは最終的に150万枚売れた。
しかし94年にリリースされた、電子音とギター、そしてノイズに塗れた自殺のアルバムThe Downward Spiralで、ロック界の最重要人物と評価されるようになった。
詳しくはカート死後のUSオルタナ3大バンドを見て欲しい。
だが、その後はマスコミからの過剰な期待が創作活動に支障をきたす。
この辺りは大衆の期待がアーティストに与える影響で述べた。
また、ドラッグなどの問題にも苦しんだようだ。
そんなプレッシャーを乗り越え、99年に傑作アルバム”The Fragile”を発表も、当時台頭してきたニューメタルに圧倒され敗北を期してしまう。
また、ロックスター願望が目立ってきたマリリン・マンソンには、ポップな要素が少なくて難解なThe Flagileを過剰な自己満足だと非難された。
少数派に戻ったオルタナを参考にして欲しい。
ビリー・コーガン(Smashing Pumpkins)みたいに「音楽産業の中で敗北した。」ってなるのか、マリリン・マンソンのように「一番大事なのは売ること、できればちょっとアーティスティックなこともしたい。あっ、キッズに理解できる範囲でなきゃね」ってなるのか―
でも俺は、「ファック・ユー、俺は俺のやりたいことだけをやる。そのためには死ぬまで(音楽産業と)戦ってやる。」って態度なんだ。
ToolのLateralusやRadioheadのKid Aがクズを打ち負かすのを見るものいいものだと思った。
でも、俺だってまだ諦めちゃいないんだ!
(トレント・レズナー Buzz Vol31 March 2002からの引用)
そして、ニュー・メタルの大半が死に絶えた2005年、6年振りとなったアルバムWith Teethで全米1位を獲得。
本物は死なないということを証明して見せた。
またドラッグを断つことに成功し、自身の闇を表現していた従来のスタイルから、世間に対する怒りを表現する方向に変化した。
売れる音楽を作らせろや鋭いツッコミとインディの欠点にインタビューを掲載しているので読んで欲しいが、トレント・レズナーは元々メジャーレーベルの商業主義を憎みながらも、メジャーレーベルのレコード流通力を頼ってメジャーに所属していた。
しかしインターネットの普及などによりメジャーに所属する必要性がなくなったと悟ったようだ。
2007年にメジャーレベルとの契約が満了すると独立を宣言。
アルバムのダウンロード販売価格をリスナーが決めるというRadioheadのIn Rainbowsの手法に感化されたようで、2008年にはインターネットを駆使した方法でGhosts I-IVとThe Slipの2つのアルバムを無料でリリースした。
CDを売って儲ける時代は終わったと感じているようで、ファイル共有ツールの利用推進にも積極的だった。
デビューから20年経過し時代の寵児とは言えないものの、若者以上にインターネット時代の音楽業界のあり方を率先して模索してきた。
かつてないほど充実した活動をしているように見えたが、2009年にはWave Goodbyeと題したワールドツアーを最後に活動休止を宣言した。
活動休止とはいうものの、発言内容から今後Nine Inch Nailsとしてのツアーは一切行わないとのことだった。
その後トレント・レズナーはHow to Destroy Angelsというグループを結成。
ヴォーカルはトレントではなく、彼の結婚相手でもあるマリクィーン・マーンディグが担当した。
2013年にNine Inch Nailsとして活動再開させ、映画のサントラを手掛けながらもNINは2020年現在も活動中だ。
関連リンク
Nine Inch Nails (ナイン・インチ・ネイルズ)のアルバム紹介
1.スタジオアルバム
Pretty Hate Machine
89年にTVTというインディレーベルからリリースされた記念すべきデビューアルバム。
他のアルバムと比べると迫力不足で個性を発揮しているようで発揮できていないような中途半端な印象を受ける。
単なるテクノ・ポップと思えてしまうのはギターの音が入っていないからだと思うが・・・
シンセサイザーで憎悪を表現という部分ではそれなりに成功していると思うし、ライヴはこの頃から怒りに満ちたものだったようだ。
Head Like a Hole、Terrible Lie、Down in It、Something I Can Never Have、Sinなど、ライヴで20年間も頻繁に演奏されてきた曲が多数収録されている。
Pretty Hate Machineの試聴リンク
Pretty Hate Machineのフォーマット一覧
- Pretty Hate Machineのリマスター輸入盤CD(2010年)
- Pretty Hate Machineのリマスター輸入盤レコード(2010年)
- Pretty Hate Machineの日本盤(2011年)
- Pretty Hate Machineの日本盤(2006年)
Broken
92年にリリースされた8曲入りEP。
EPながら次のThe Downward Spiralにつながる重要な作品だとされる。
Pretty Hate Machineとは対照的にノイジーなギターを積極的に取り入れ、憎悪や自虐心を過激に表現したことは、その後に進むことになる音楽性の原型といわれる。
またそのような怒りに満ち溢れたサウンドになったのは、TVTとの契約問題が原因だとされる。
Wish、Suck、Gave Upはライヴでも頻繁に演奏されてきた曲。
Opinion、Help Me I’m In Hell、Happiness In Slaveryのビデオはニヒルな映像が話題となった。
特にHappiness In Slaveryは、男がミンチにされる過激な内容で放送禁止、日本ではビデオそのものが輸入禁止となった。
Brokenの試聴リンク
Brokenのフォーマット一覧
The Downward Spiral
カート・コバーンが自殺した94年にリリースされた2ndアルバム。
多くのファンがこのアルバムを最高傑作と評価するだろうが、中身はとても大衆ウケするものではない。
「獣のようにファックしたい。」という歌詞がウケたヒット曲Closerこそあるものの、全体的に数回聞いただけで良さを理解できる曲は少ない。
しかし、シンセサイザーやサンプリングを駆使したノイズまみれの自虐的な音世界は大絶賛されることになった。
このアルバムは内向的な現代人の闇そのものだといわれることもあり、彼をロック界の最重要人物に押し上げることとなった。
内容は一言でいうと自己否定の多い「自殺のアルバム」だが、最後の曲Hurtでは希望の光を残している。
リリースから10年経った2004年、トレント・レズナーが5.1chにリマスターしたSACDとレアな曲を収録した2枚組のデラックスエディションがリリースされた。
5.1chを再生できる人は是非とも体験してみて欲しい。
The Downward Spiralの試聴リンク
The Downward Spiralのフォーマット一覧
- The Downward Spiralのリマスターレコード(2016年)
- The Downward Spiralのデラックスエディション輸入盤(2004年)
- The Downward Spiralのデラックスエディション日本盤(2005年)
- The Downward Spiralの日本盤(2010年)
- The Downward Spiralの日本盤(2008年)
- The Downward Spiralの日本盤(2007年)
The Fragile
99年にリリースされた2枚組アルバム。
これも永遠に語り継がれるであろう大傑作。
前作よりも不気味な機械音は減り、人間が演奏している楽器が増えた。
重たいギターが目立ち、なおかつピアノの音色の美しさも印象的。
アルバムタイトル通り儚さや脆さと同時に美しさ感じさせる名盤だ。
相変わらず暗黒的だが、リリース当時はThe Downward Spiralと比べて明るくなったという評価も少なからず存在した。
We’re In This TogetherやStarfuckers INCはヒット曲。
しかしマリリン・マンソンに「過剰な自己満足」と非難されたように難解な曲が多い。
逆に言えば、ハマれば奥の深さに驚くだろう。
初登場全米1位を獲得するものの、翌週はチャート圏外という、本人曰くありえないスピードでチャート圏外へ消えて入ったらしい。
実際、この時点でNIN史上最も売れないアルバムとなった。
評論家やミュージシャンから高評価を得てロックの救世主という期待に応えたが、当時台頭してきたニュー・メタルに敗れ去ることとなった悲劇の傑作。
The Fragileの試聴リンク
The Fragileのフォーマット一覧
- The Fragileのリマスターレコード(2016年)
- The Fragileの日本盤(2008年)
- The Fragileの日本盤(2006年)
- The Fragileの日本盤(1999年)
- THE FRAGILE: DEVIATIONS 1 (The Fragileのインスト・オルタナ・ヴァージョン、レコード盤のみ)(2016年)
With Teeth
2005年にリリースされた4thアルバム。
この後、トレントと長年にわたりタッグを組むことになるアティカス・ロスがはじめて参加した。
ドラッグ問題にケリをつけ、自身の闇よりも世の中に対する怒りを表現するスタイルに変化した復活作だ。
1stアルバムPretty Hate Machineを彷彿させるアルバムだと言われる。
ノイジーなサウンドや、プログレ的で大袈裟なアレンジが抑えられているNIN版パンクアルバムといったところだろうか?
難解な表現が少ないので理解しやすいアルバムに仕上がっている。
最高傑作だとする人は少ないだろうが入門用にオススメだ。
とはいうものの、単なるポップ・アルバムにならずに怒り悲しみ不安といった負の感情表現が豊かなのには脱帽するしかない。
ポップとリアルが同居したNirvanaのNevermindを連想させる。
You know what you are?、The hand that feeds、Only、The line begins to blurがわかりやすいのでここから入門すると良いだろう。
With TeethのDVD付2枚組のDVDには5.1chサラウンドが収録されている。
With Teethの試聴リンク
With Teethのフォーマット一覧
- With Teethのレコード(2020年)
- With TeethのDVD付2枚組輸入盤(2005年)
- With TeethのDVD付2枚組日本盤(2005年)
- With Teethのの日本盤(2006年)
- With Teethのの日本盤(2005年)
Year Zero
2007年作。
With Teethから2年後という、NINにしては短いタイムラグでリリースされたのに驚いた人も多かったと思う。
NINのアルバムの中で最も政治色の強く、テーマに沿ったコンセプトアルバムとなっている。
日本盤ライナーによると「舞台は15年先の未来。全体主義による統治が進み、政治的にも精神的にも生物学的にも限界に達した世の中で、ゼロに向かう恐怖のカウントダウンが始まっていく。」というストーリーだ。
その背景にはブッシュ政権や間違った方向に進んでいるアメリカ人に対する怒りがあるのだろう。
Year Zeroに関する謎のサイトを多数出現させて話題となった。
CDは再生すると熱により黒から白に変色する細工が施されており、白くなったCDに数字が浮かび上がるのだが、その数字も謎のサイトにアクセスするための暗号のようなものになっているらしい。
謎のサイトに関することは膨大な情報量なのでninwikiのTimeline of Year Zero Discovery(英語)を参考にして欲しい。
これらはインターネットの口コミで広まって行ったようで、ネット時代を強く意識したNINらしいプロジェクトとなった。
肝心の音楽はAphex Twinを連想させるようなドラムなど非常に機械的なサウンドとなった。
古臭いサウンドなどという批判もあったし、過去のアルバムと比べると質が劣る感も否めなかったが、改めて聞いてみるとNINらしいサウンドだと思うし、ポップな曲の中にも奥の深さがあると思う。
Year Zeroの試聴リンク
Year Zeroのフォーマット一覧
Ghosts I-IV
メジャーレーベルから離れた後、2008年3月2日にネット上でリリースされた36曲入りのアルバム。
36曲のうち9曲のMP3は無料でダウンロードできた。
フォーマットはMP3が5ドル、CD2枚組が10ドル、デラックスエディションが75ドル、ウルトラデラックスエディションが300ドル。
デラックスエディションをリリースする辺りが、デジタルデータだけでなく音楽を物として扱う人々のことも考えていたと思う。。
MP3は最高音質で更にジャケットやクレジット、1曲ごとにアートワークが付いている。
そういう面で劣っていたRadioheadがIn Rainbowsをリリースした手法をより進化させたといえる。
ウルトラデラックスエディションは高額にもかかわらず、即刻売り切れたので現在では購入することはできない。
当初はオフィシャルサイト上だけの販売だったが、後に小売店にも流通させた。
日本盤にはトレント・レズナーがGhosts I-IVについて語ったボーナスCDが付いてくる。
音楽性は全曲インストゥルメンタルで歌は一切入っていない。
ピアノや聞きなれない楽器を使用した静かな曲から、轟音でヘヴィな曲まで色々入っている。
The Fragile時のアイデアが多く使われたようで、実際にThe Fragileを連想してしまう瞬間が多々ある。
With Teeth以降のポップな面が好きになれない方もこのアルバムの奥深さには納得できるのではないか。
逆に大衆性は皆無なのでポップソングを期待する人は肩透かしを食うことになる。
現在は9曲無料でダウンロードできたオフィシャルサイトは閉鎖されているがGhosts I – IV : Nine Inch Nails : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archiveから合法的に入手できる。
Ghosts I-IVの試聴リンク
Ghosts I-IVのフォーマット一覧
The Slip
Ghostsリリースから2ヵ月後の2008年5月に無料で配布されたアルバム。
フォーマットはMP3だけでなくCDと同等の音質のFlacなどやCD以上の音質を誇る96khz/24bitのWavがある。
かつてはオフィシャルサイトが存在し、The Slipから無料でダウンロードできたが(MP3以外はファイル共有ツールで配布)、現在では存在しない。
だがThe Slip : Nine Inch Nails : Free Download, Borrow, and Streaming : Internet Archiveから合法的に無料でダウンロード可能だ。
アルバム前半はNINらしい緊張感あふれるポップソング。
ツアータイトルにもなったLights In The Skyというピアノの曲の後はインストになる。
完全無料なのでまずは気軽に聞いてみて欲しい。
With Teeth以降のNINは様式美(新しいサウンドではなく過去と同じことを繰り返すこと)との批判も目立ち始めた。
個人的にはNINのアルバムの中で最も「バンド」を感じさせる人間臭い部分が魅力的に思えるのだが・・・。
政治的なYear Zeroとは一変して再び自己の闇を見つめているような歌詞となった。
またこのアルバムのツアーの映像もファイル共有ツールで配布された。
未編集の映像で容量は400GBにも及び、リスナーに映像を編集してネットで公開することを促し、実際に有志が編集した多数の映像が公開されている。
アルバム自体は現物CDとしてもリリースされた。
リハーサル映像が収録された2枚組で全世界限定25万枚。
全てにシリアルナンバーが入っている。
このアルバムのリリースから1年後の2009年、トレントはNINとしてのツアー活動を休止すると宣言した。
The Slipの試聴リンク
2.ライヴアルバム
And All That Could Have Been
2000年に開催されたFragility 2.0と題されたアメリカでのツアーでレコーディングされたライヴアルバム。
リリースは2002年。
サウンドにこだわるトレント・レズナーだけあって音がとてもクリアで、ライヴならではの迫力もある。
特にPretty Hate Machineの曲にはアルバムとの違いに驚くと思う。
2枚組の初回限定盤にはStillと題されたアルバムが付属していた。
未発表曲と既に発表された曲のアレンジ違いが収録されている。
全体的にピアノが主役となっており、静的なNINを聞くことができる。
現在、StillのCDはオフィシャルサイトで購入することができる。
ライヴ盤には同タイトルのDVDもリリースされた。
収録曲はDVDの方が多い。
DVDにはシークレット映像が収録されている。
Disc1では26分58秒でEnterを押すとGave Upの別アングル映像を見ることができる。
Disc2では11分19秒で7を押すとシークレット映像のメニューが表示される。
The Day the World Went AwayとReptileの他、喧嘩別れしたと思われていたマリリン・マンソンと共演したときの映像などが収録されている。
And All That Could Have Beenの試聴リンク
- And All That Could Have Beenのアルバム全曲(You Tube)
- Stillのアルバム全曲(You Tube)
- And All That Could Have BeenとStillのアルバム全曲(Spotify)
And All That Could Have Beenのフォーマット一覧
- And All That Could Have Beenの初回限定2枚組輸入盤(2002年)
- And All That Could Have Beenの初回限定2枚組日本盤(2002年)
- And All That Could Have Beenの日本盤(2002年)
- And All That Could Have BeenのDVD日本盤(2002年)
- And All That Could Have BeenのDVD輸入盤(2002年)
Beside You in Time
2006年のWith Teeth期のツアーの映像。
映像作品のみでCDなどはリリースされていない。
ライヴ映像は様々な動画サイトで見ることができるので、こういう映像作品は熱心なコレクター向けだろうか。
内容は良いのでお勧めしたい。
Beside You in Timeの試聴リンク
Beside You in Timeのフォーマット一覧
Another Version of the Truth
The Slipの欄でも書いたが、この時期のLight In The Skyツアーの映像がファイル共有ツールで配布された。
未編集の映像で容量は400GBにも及び、リスナーに映像を編集してネットで公開することを促したのだが、有志が集まりThis One Is On Usという組織が作られ、映像を編集してDVDをリリースするというプロジェクトが立ち上がった。
その有志達が制作した作品がAnother Version of the Truthだ。
現在ではNine Inch Nails Live Archive: NIN, Another Version of The Truth by ThisOneIsOnUsからダウンロードすることができる。
またDownloads | TOIOU fan driven live recordingsからtorrentファイルを入手できる。
This One Is On UsのYou Tubeで全て見ることもできる。
ThisOneIsOnUsの再生リスト(You Tube)
3.Nine Inch Nails以外の作品
How to Destroy Angels
2010年6月にリリースされたEP。
NINは休止したものの、NINの音楽性を連想してしまうような作風となった。
注目すべき新しい点は、王道NINサウンドに女性ヴォーカルが乗っているところだろう。
マリクィーンのヴォーカルはトレントの世界にマッチしていると思う。
これもHow to Destroy Angelsのオフィシャルサイトで無料でMP3をダウンロードできるので、まずは聞くべし。
How to Destroy Angelsの日本盤(2010年)