少数派に戻ったオルタナ

Tool / メイナード・ジェームス・キーナン (ロッキングオン2001年3月号から引用)

ニルヴァーナが道を開いてくれたおかげで、「すべては音楽のために」っていう、従来より理想主義的な考え方を持ったたくさんのバンドが、人気を得るようになったんだ。
「いや、こんなこともそんなこともやる必要なんかない、(カネではなく)いい音楽を作ることが最重要課題なんだ」っていうスタンスのバンドがね。

そしてその点に関しては連中は一歩も譲らなかった。
パール・ジャムもサウンドガーデンも、ナイン・インチ・ネイルズ、レイジ、それにトゥールも、みんな自分たちの流儀を貫いたわけだ。

でもそこにはマイナス面もあって、連中はシーンの空きの部分を埋めはしなかった。
「アルバムを毎年作る必要はない」なんて調子だからね。
でもリンプ・ビズキットとか最近のあの手の連中(ニューメタル、ラップメタル)はそこらへんも積極的で、空白部分を満たしていったんだ。

で、俺たちは活動を停止していたし、世間も気が変わるのが早いから、連中にある種シーンをのっとられてしまった、と。
あいつら月並みな音楽しかやってない上に、アートとは一切無関係なことを喜んでやりたがるんだよな。

98年以降にニューメタル、ラップ・メタル勢がメインストリームを支配する中、大物オルタナ系バンドも傑作を発表し続けたが、リスナーの意識を変えるほど大きな支持を得ることはなかった。

Nine Inch Nailsは99年に超傑作The Fragileをチャート1位に送り込んだが、過去に例を見ない勢いでチャート圏外に消えていった。

Adoreが大敗したSmashing Pumpkinsも集大成的なアルバムMachinaを00年にリリースしたが、結局は解散してしまった。
詳しくはオルタナ代表バンドの動向とオルタナの敗北を読んで欲しい。

ハードロック・バンドみたいなもの(ニューメタル・ラップメタル)が存在しているじゃない?
今のシーンのトレンドとしてね。
だからその対極としてのロック(オルタナティヴ)がどう存在しうると思う?
現実問題、どんな可能性があると思う?
アコースティック・ギターでも持つべきなのかな?・・・
次のムーヴメントは全員アコギ!みたいな(笑)
(Smashing Pumpkins / ビリー・コーガン 2000年)

Korn同様にロックスター志向、成功願望を垣間見せるようになったMalylin Mansonからは、NIN、Smashing pumpkins共に従来のファンの嗜好を無視して好き放題作風を変える姿勢を「過剰な自己満足」と非難された。

Rage Against The Machineも99年にBattle Of L.A.で他のラップ・メタルと格の違いを見せたが、彼らの政治的な主張や怒りなどどうでもいい連中が飛びついた感が否めず、Limp Bizkitなどと同系列で捉えられてしまう。
結局、メンバー間の考え方の違いから00年に解散してしまった。

Beckは面白い作品を作り続けたが、ニュー・メタルに存在を消された感がある。

At The Drive-Inのようなオルタナ的感覚を持ち合わせた新たなバンドが登場し、ロックの救世主とされたが、Rage同様ヘヴィ・ロック勢と同次元で受け止められ、シーンを変えるには至らなかった。

また、90年代後半頃には、後に重要バンドと評価されるBright EyesやWhite Stripesのようなバンドが登場していたのだが、当時はあまり注目されなかった。

02年、最後のオルタナ・ヘヴィ・ロック・バンドであるToolが4年ぶりの新作Lateralusを大ヒットさせたが、StaindやLinkin Parkで勢いに乗ったニュー・メタルの波を変えることはできなかった。

Sonic Youth / サーストン・ムーア (ロッキングオン2003年5月号から引用)

上手い具合にアメリカの男根主義的なところを利用したな、って感じだな。
ニルヴァーナって凄くヘヴィなバンドだったけど、マッチョなところってほとんどなかったよね?
それどころかカートはそういう態度に嫌悪感さえ抱いてて、そうした連中と一緒くたにされないよう「ゲイになりたい」って嘆いてたぐらいなんだからさ(笑)。

だけど、ニルヴァーナの成功をお手本に似たような音を鳴らすバンドが台頭し、さらにそれをピップホップ的な要素を加えて男の子にアピールするようなマッチョな音楽が全国に蔓延しちゃったんだよね。
「俺たちはクレイジーだぜ」みたいなことを平気で言っちゃうようなバンドがさ(笑)。
凄く単純で軽薄な音楽なんだけど、それが巨大化しちゃったっていう。

だけどさ、これはラップメタルをやってる連中も自覚していることだと思うけど、10年後、ラップメタルのことなんか気にする人がいるとは思えないんだよね。
文化的なメリットはほとんどないし、まさに時代に押し潰されてしまうような使い捨ての音楽なんだ。

別にラップメタルに反感を抱いてるわけじゃないけど、やっぱり賞味期限のある音楽だと思わない?
その反面、ニルヴァーナはタイムレスなんだ。
リンプ・ビズキットはいずれ廃れるだけ。

多少は売れるが音楽シーンの主役とは言えない。
このような状況から、98年頃からオルタナディヴはロックシーンの主流ではなくなり、文字通り反主流的な音楽に戻っていったと考えられる。
グランジ・オルタナ・ムーヴメントは98年の時点で終焉を迎えていたのだ。

だが、オルタナ的志向を持った人は確実に増えたであろうし、インディの面白いバンドが注目を浴びやすい状態は今でも続いている。
最後は肯定的に捉えてもいいのではないだろうか。

ちなみに、アンダーグラウンドに戻ったオルタナが再び脚光を浴び始めるのは9.11によりニューメタルが失速し、ニューメタルと入れ替わるように登場したThe Strokesが大ブレイクを果たした後となった。
その後はオルタナティヴという言葉は使用されなくなり、インディという言葉が頻繁に使用されるようになっていった。

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