鋭いツッコミとインディの欠点

ニルヴァーナはよく、クラブ(小さい会場)ではもうできないとブツブツ言っていたけど、騙されちゃいけないぜ。
クラブでやりたかったら、クラブでやればいいのさ。
(NOFX / ファット・マイク)

本当にメインストリームを嫌っているんだったら、そんなものはもはや存在さえしなくなって関係なくなるはずだ。
Nirvanaのレコードは大好きだけど、小便臭い態度には耐えられないよ。
(Guns N’ Roses / スラッシュ)

メジャーのやり方が気に食わないならインディでやればいい
大観衆を否定するなら、5人ぐらいしか入っていないライヴ・ハウスで演奏しろ
金を否定するなら汚い仕事をしながらバンド活動をやれ

アンチ商業主義者に対して、当然のことながらこのような鋭いツッコミが入った。
メジャーを否定するならメジャーをやめろという単純で御尤もな意見だ。

次のアルバムが作れるぐらい売れればいい。
(Soundgarden / クリス・コーネル)

このような折衷的な発言もあったのだが、生粋のインディ主義者には通じなかったようだ。
だが、インディがバンドにとって究極の理想郷というわけではない。
最大の欠点は流通力が弱いことと資金難だろう。

メジャーはレコードの流通以外はクソ
(カート・コバーン)

当時はインターネットなど普及していない時代。
あのバンドのことは気に入った、でもレコード屋にアルバムが置いていないので買えない、といった悲劇が起こる。

今でこそインディレーベルは隆盛を極めているが、当事は「インディレーベルの運営方法」などのノウハウが全くない時代。
80年代のSUB POPの資金難は深刻な状況だった。
Nirvanaは、自分たちのレコードがまともに店に並ばない状況に苛立ち、SUB POPの資金難が原因でアルバム製作を延びに延ばされた。
インディ大手のSSTでさえ、多くのバンドと金銭的なトラブルを抱えていたようだ。

インディレーベルを離れることに関しては心配していなかったことは確かさ。
あそこはどいつもこいつも犯罪人って感じで、金は払わないわ、騙されるわ・・・
だからメジャーがそれより悪いものには見えなかったんだよ。
インディは一般的に言って胡散臭くて・・・
メジャーの状況と同じかそれ以下だな、あれは。
(SSTに所属していたDinosaur Jr / Jマスシス)

また、金儲け以前に、自分の音楽を多くの人に聞いてもらいたいという思うのがミュージシャンとして当たり前だ。

現実的に考えれば、自主制作盤をリリースするのだってある程度の金が必要だ。
金を儲けるということが必要なのも理解できる。
しかし、ロックが好きなリスナーは金儲けを嫌う人が多い。
ビジネス的な雰囲気を感じただけで、インチキ臭いとそのバンドに対してリアリティを失ってしまう。

80年代と90年代は対照的で両極端な時代だったと思う。
バブリーな音楽シーンはいい気分がしないし、ライヴ・ハウスに客を50人集めただけでセルアウトしたと罵られるのもしっくりこない。
今時のバンドを見ているとバランスよくやっている感があるが、ロックとビジネスは永遠の命題なのかもしれない。


ミュージシャンの発言集

Nine Inch Nails / トレント・レズナー (Buzz Vol31 March 2002からの引用)

なぜ俺がインディに行かずにメジャーに残るのかって言う話になるんだけど、作品にできるだけ多くの人に触れてもらうには、巨大レーベル様の力を借りて俺のレコードをアメリカ中のレコードストアに配給してもらわないとダメなんだよ。

その結果として、より多くの人が『本当だ、奴が言っていたように他のアルバムは全部クソだった。
商品なんてもう聞くのよそうぜ。
クリスティーナ・アギレラはもうたくさんだ。』って気づいてくれるはずだからなんだ。

つまり、巨大レーベルの力を借りて、最後には巨大レーベルを自滅に追い込もうとしてるわけ。

本当に悪い状況を覆したいなら何か抵抗をすべきなんだ。


Sex Pistols / ジョニー・ロットン (Still a punk―ジョン・ライドン自伝から引用)

ピストルズ結成当時はインディペンデント・レーベルも皆無だった。
あれは、いわゆるパンク・ムーヴメント後の現象だ。
当時唯一のインディペンデント・レーベルと呼べるのはチズウィックだった。
チズウィックにオフィスがあったからそう呼ばれていただけ。

そんなレーベルと契約したいバンドなんていないだろ?
もっとでかいところから始めたいと思うだろ。
一人でも多くの人に自分の音楽を聞いて欲しいだろ?
流通網を持っていないと意味無いんだよ。

自称インディ・レーベルと契約を結ぶと、やつらはその契約をメジャー・レーベルにリースして、結局使い回しにされるんだ。
インディ・レーベルの中にはメジャーの独占体制を崩したと自負するところもあるけど、そんなのクソ馬鹿らしいね。レコードをプレスして、流通に乗せて売るために、メジャー・レーベルの介在が必要だっていうのにさ。
大手のレコード屋に存在も知られてないレーベルは、レコードも置いてもらえなくて、おしまいさ。


Foo Fighters / デイヴ・グロール

パンク・ロックをめぐる、『メジャーと契約したらセルアウトだ。』っていう議論は、とにかく面倒くさい話なんだ、そこにはたくさんの矛盾が潜んでいるからね。

例えばメジャーと契約して、その恩恵を十分に利用させてもらいながら、『俺はこのコーポレート・マシーンを内側からブッ壊してやろうとしているのさ。』と言って納得させるとか、もしくは『俺はもっと多くの人たちに俺のメッセージを聞いてもらいたい』って気持ちを持ってるからそれを実現させるためには大企業のシステムを自分のいいように利用する必要があるとかさ。
詰まるところ、それがピストルズみたいなバンドがやったことなんだ。

その意味で何となく妙な感じがしたのはNirvanaがサブ・ポップからゲフィンに移ったときで・・・
僕らは、いろんなところで槍玉に挙げられたんだけど、『おい待ってくれよ、俺達は音楽を犠牲にしてないぜ。』って思ったんだ。
人間的にも前と少しも変わっちゃいなかったし、掲げている理想だって変わってなかった。

僕らの望みは、言ってみれば世の中の音楽の風潮を変えることだったんだ。
『なあ、ボン・ジョビが何だってんだ、あんなのはクソだよ。
ホイットニー・ヒューストン? 面白くも何ともないぜ。
ロックンロールは死んでしまったんだ。
だから俺達は俺達でこういうのをやってくぜ。
俺達のは作り物なんかじゃない、本物なんだよ。
俺達はみんな、生身の人間なんだ。』ってわかるだろう?

僕らは金が欲しくて音楽を始めたんじゃない。
そりゃ勿論、たっぷりと儲けさせてもらったし(笑)、その点に関してはありがたいと思ってるはずだけど・・・
とにかく、この手の議論はむずかしいよ。


The Jesus Lizard / デヴィッド・ヨウ

全てのメジャーレーベルが俺らに関心を持っているみたいだけどね。
今のところ(インディレーベルの)タッチ・アンド・ゴーに満足しているんだ。
アーティスティックな面でのコントロールは俺らが握っているし、好きなときに好きなことをやらせてもらえるし、金銭的にも満足しているし。
別にメジャー・レーベルと契約することはできるんだけど、タッチ・アンド・ゴーほどの条件のところは今のところ無いんだ。(しかし、その後メジャーに移籍することとなった)


Bad Religion / ブライアン・ベイカー

昔、クラッシュやピストルズ、バズコックスのアルバムを買った頃に裏返して、あっ!これはメジャーのバンドだから好きになれない、なんて一度も無かったぜ。
音楽あってのことだからね。
聞く人にとってはメジャーもインディも重要じゃないよ。


スティーヴ・アルビニ

ソニック・ユースだって完全な主導権なんて持っていないよ。
メジャーのレーベルにいて、レコードその他の作品に対して100%主導権を握ってると言ってるバンドは、嘘をついているか、騙されているかのどっちかだ。


Fugazi / イアン・マッケイ クロスビート1997年1月号

これは俺個人の意見だけど、アンダーグラウンドにいるバンドの目的は、音楽を作ることだ。
でもメジャー・レーベルに行ったバンドの目的は、金なんだ。
メジャー・レーベルはどこも利益最重視だから、そのバンドが利益をあげ
る限りは、一緒にやる。バンドは自分たちの音楽をみんなに伝えたいという気持ちがあるから一生懸命やるけど、レコード会社は音楽なんかどうでもよくて、そのバンドがあげる利益にしか関心がない。
利益を生まないバンドはサッサと切り捨てられてしまうし、ヒットを飛ばしたバンドはより大きなヒットを出すことを強いられる。
仮にそういうプレッシャーがなくても、バンドの側がそう思い込んでしまう。
アンダーグラウンドからメジャーに行ったバンドと何度も話したことがあるけど、彼らの口から音楽の話なんて出たためしがない。
金の話か、自分がレコード会社からどんなにイヤな思いをさせられているかという愚痴しか聞いたことがないよ。
結局一般の人が求める音楽をレコード会社が勝手にでっちあげて、それをバンドに演奏させてるだけだ。だからメジャーにいるバンドの音楽にはロクなものがない。

・・・

ビースティ・ボーイズは凄いと思うよ。
メジャーに行っても、常に新しいことに挑戦し続ける勇気を持っている。
アルバムごとに成長して、変化している。

でも(メジャーに移籍した)ジーザス・リザードはそこで妥協してしまった。
「それまでのバンドサウンドを踏襲すること」っていう一項を契約書に入れられてしまって、大胆な変化ができなくなっている。
他のバンドの多くも変わりばえのしないサウンドにいつまでもしがみついている。

全く馬鹿げているよ。


Ministry / アル・ジュールゲンセン (ロッキングオン1996年3月号から引用)

メジャーレーベルなんて、どこも金を稼ぐことしか考えていない。
みんな金が目当てなんだ。
俺たちは金儲けに利用され、逆に俺たちも彼らを利用する。
別に金を儲けることに反対してるわけじゃないぜ。
俺だって娘にいい教育をあたえてやりたい。
俺自身、貧しい家庭で育ったから余計、娘にはいい思いをさせてやりたいと思うんだ。

かつて、自分たちでツアーをブッキングするとき、あまりに大きなアリーナとかは避けたかったんで、大手の会社ではなくインディー系の会社を通じて、砂漠の真ん中とかそういう辺ぴなところでやったことがあったんだけど、金を騙し取られたんだ。

6回のショーのうち2回は完全にタダ働きだった。
チケットを買った子たちが可哀想だったから演奏はしたけどね。

インディペンデントなんて格好付けで、単なる詐欺だった。
結局みんな金が欲しいだけなのさ。
むしろインディーズは表面で無欲を装っている分、メジャーよりタチが悪いね。

つまるところ、いいレーベル悪いレーベルなんてものは無い。
俺たちは生活のために彼らを利用する。
ただし妥協はしない。
どんな音楽をどうやって作れとか、どういうジャケットにしろとか、どうマーケティングしろだとか、一切言わせない。

その代わり、莫大な額の前払い金は受け取らない。
例えば、ナイン・インチ・ネイルズなんかにはアルバム毎に300万ドル支払われている。
なぜなら、それだけの金を受け取ってしまえば、完全に支払った側の所有物になるからだよ。
誰かが300万ドルくれたら、それ相応のことをして返すのが義理というもんだろ。
それだけ投資されたわけだから、投資した側のルールに従うしかない。
俺たちは、そういう類の金を取っていないからこそ、自由でいられるんだ。


Red Hot Chili Peppers / ジョン・フルシアンテ (クロスビート2003年12月号)

確かに昔は成功にストレスを感じてて…
でもそれはあくまで個人的で心理的な問題だったんだ。
誰でも感じることで…

パール・ジャムのエディ・ヴェダーだって感じてただろ?
みんな頭の中でパンクに対する特定の美学を持って育つと、成功に対して嫌悪感を感じるものなんだよ。
そして成功した時に、その状態に浸るより、それに抵抗することの方が気持ち良かったりするんだ。
若い時にそういうことに抵抗するのは健全なことなんじゃないかな。

でも今33歳にもなって、成功したことに抵抗するフリはできないね。
それを恥じる必要なんてなくて…
俺は音楽をやって生計を立ててるんだし、それができるなんて素晴らしいことだよ。


Metallica / ラーズ・ウルリッヒ (ロッキングオン1998年7月号から引用)

94年~95年辺りのアメリカの音楽シーンは、とても退屈な、生気のない、安全な世界だった。
次に何が起きるか分かってしまうような。
だからオアシスの存在は新鮮だった。

エディ・ヴェダーのようなスターダムに抵抗する人間が、その頃アメリカ中の注目を集めていた。
オアシスの「俺たちはスターになりたいんだ。成功したいし、金儲けもしたい。ドラッグも女も今すぐ全部欲しい。」っていう態度は、ハッキリ言ってロックンロールの本質だと俺は思う。

危険な要素がなければロックンロールじゃない。
90年代バンドでデンジャラスだった最後のバンドはガンズ&ローゼスだったと思う。


マドンナ (ロッキングオン1996年2月号から引用)

あの頃のオルタナティヴ・シーン、ジェネレーションXシーンって「成功なんてクソ食らえ、80年代なんてクソ食らえ、金持ちなんてクソ食らえ、体制なんてクソ食らえ!」ばかり言っていた。
だけど結局、そんなものは全くの偽りなのよ。

コートニーだって反体制なんかじゃ全然ないわ。
だってあの娘ったらシャルル・ジャルダンの靴を履いて、プラダで買い物をしてるのよ。
だから全部、聞こえのいいだけの戯言なのよ。


Kiss / ジーン・シモンズ (ロッキングオン1997年2月号から引用)

いまどきCD一枚買うよりコンサート一回見る方が金がかかるんだ、「さあこれからアンプに向かって倒れ込んで自暴自棄の振りをするぞ」なんてもの以外のものを聞かせてもらいたいもんだぜ。
そりゃ1曲だったらそれも面白いけどな。

ニルヴァーナはそういうバンドの典型だったし、カートが自殺した日には、「畜生、先を越されたぞ、もう自殺してもスピンやミュージシャンの表紙を飾れねえんだ。」って思ったバンドのフロントマンが大勢いたはずさ。

まったく悲惨だね。
つまり、俺たちこそがオルタナティヴなのさ。
だからこんな糞詰まりシーンのことは忘れちまおうぜ。
楽しい時代が戻ってきたんだ。

・・・

俺はこのよれよれシャツの時代ってのにうんざりしてるんだ。
こいつらはプラチナ・アルバムを何枚持っていようが、自分達にはまともなショウをまかなう金もないって振りをするんだからな。

ファンが払った金に見合うものを提供するのは欺瞞であるっていうのが最近の風潮だからね。
「俺は自己破壊的だ。だからステージで苦悩をぶちまける。お前達にはちゃんと金を払ってもらうからな。」というわけさ。

泣けてくるようなメロドラマじゃないか。
まるで、何も悪いことは一つも起きちゃいないのに関心を引きたくて泣いているガキみたいじゃないか。

誰もがこぞって自殺したがるのを見物させてもらって確かにおもしろかった。
だが俺は今、ここでその終結を宣言する。
さあ、ロックしようぜ。


At The Drive-In / ジム・ワード ポール・ヒノジョス ロッキングオン2001年2月号から引用

良い面も悪い面も両方あったと思うよ。
インディだったら、誰も僕らを知らないわけだから、知る人ぞ知るバンドでいられたわけだ。
だけど、同時に「インディ」であるということで色々な掟みたいなものが付随してくる。
例えば、インディ・バンドでいたかったらロス・ロビンソンにプロデュースしてもらうなんて絶対にありえないんだ。
でも僕たちは、そんな掟みたいなものに縛られてても意味がないって思って。

「インディ」でありたいがために「門戸」を閉じてしまったら、巡ってこないチャンスっていうのは絶対にある。
僕たちは門戸を開放することにしたんだ。
そして今、そのお陰でしっかりとぶり返しも受けている。
僕たちはピップでクールなバンドじゃないし、人によっては裏切り者呼ばわりするしね。

たくさんのクソみたいな奴らとも付き合ってかないといけなくなった。
でも、そんな奴らとも仕事をしないといけない。
僕たちにとってツアーは学習なんだ。
メジャーレーベルに所属しながら、どうやって自分たちの理想を守り通し、走り続けられるかっていうね。(ジム・ワード)

あと、小さい町の人たちでも僕たちのレコードを買えるようになったこと。
今まで、「ライヴ凄くよかった。だけど、僕たちの町のレコード屋には売ってないんだ。」なんてことがしょっちゅうあったからさ。
でも、メジャーレーベルと契約したおかげでそれがなくなったわけで、それはよい面のひとつだと思う。(ポール・ヒノジョス)

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