売れる音楽を作らせろ

レコード会社は、レコードを売ることしか考えていないとよく言われる。

理論的に考えれば金を稼がなければ成り立たないので当然のことなのだが、その考え方がアーティストが自由に製作した音楽を如何に売るかから、アーティストに売れる音楽を製作させるという商業主義丸出しの姿勢に変化することもあり、アーティスト側からは評判がよくない考え方だといえる。

一般的なレーベルとアーティストの関係では、音楽製作費をレーベルが負担する代わりに、レーベルが原盤権(完成した音源に対する権利)を得る。
つまりレーベルはアーティストが完成させた音源が売れないと判断したらリリースしないこともできる。
それゆえ、まれに「とあるアーティストがレーベルにアルバムリリースを拒否された」というニュースを目にすることがある。

売れる音楽=いい音楽ではないし、売るために自分の音楽性を変えるというのは、芸術家として許せない行為なのだろう。

NirvanaのIn Uteroも、かつてこんな騒動に巻き込まれたことがあった。
録音エンジニアのスティーヴ・アルビニは、ゲフィン(Nirvanaが所属していたメジャーレーベル)はこのアルバムを全く気に入っていないようだと発言。
Nirvanaがレコード会社からの圧力を否定したこともあり、事実はどうなのか微妙なところだが、ラジオやMTVのオンエアに堪えうるよう数曲だけミックスし直したといわれることもある。

メジャーレーベルの海をうまいこと航海できるバンドは一握りで、ほとんどは何らかの妥協を強いられているんだよ。
でも、俺たちは音楽に対するクリエイティヴ・コントロールを手放すことは絶対に嫌だったんだ・・・

大体、誰かから金を受け取るっていうことは、借りを作るってことなんだ。
監視と投資の対象になるってことなんだ。
で、投資(メジャーレーベルから貰える契約金)っていうのは最終的にそこから利益を上げるってことが目的で、利益が上がりそうに無かったら、あれこれやり方を変えようとして、何とか儲けを出そうとする。
つまり、そういう状況に陥ったら、何らかの妥協を強いられるのは目に見えているわけだから、投資を受けるときはその覚悟が必要なんだよ。
フガジはそういう妥協をのむつもりは無かったから、(メジャーの誘いを)全部断ったんだ。
(Fugazi / イアン・マッケイ BUZZ Vol.41 April 2003から引用)

メジャーに進出し、パンクファンから軽蔑される金の亡者になった人もいるらしい。
ビジネス的なものを意識して曲を作るようになり、コアなリスナーからダメになった(セルアウトした)と批判を受けるバンドもいた。

音楽の宣伝活動の強要など、メジャーに所属していると何かと金が絡んだ問題が生まれる。

(ビデオのアイデアを話すと)『いいね、それ。ぜひやろう。』って言ってくれるような奴は全員消えてしまったんだ。
それを経理の奴に話さなくちゃいけなくなったわけ。
俺がアイデアを言うと、『それって制作費はいくらかかるわけ?』って聞いて来るんだ。
『そうだな、20万~30万ドルって感じかな』なんて答えるとするよね?
すると今度は『それでビデオを作ったらMTVは何回オンエアしてくれることになってるんだ?』ってくるわけ。
『お前のMTVでの競争相手は、こいつとこいつとこいつだ。
お前のこのビデオはこれだけの制作費をつぎ込んでちゃんと元が取れて俺のところに収益がくるんだろうな?』って言われるんだ。
(Nine Inch Nails / トレント・レズナー BUZZ Vol31 March 2002からの引用)

(ソロアルバムをインディからリリースした理由を問われて)
メジャーが求めるようなことをやりたくなかったからさ。
メジャー主導の音楽業界では、自分をあらゆる方法で売ることが期待される。
2ヶ月間インタビューを受けたり、1年半くらいツアーに出たり、曲をテレビ番組で使ってもらったり、何らかの方法で自分を売り出さないといけないけど、俺はそういうことに興味がないんだ。
ラジオを全く意識せずに、実験精神を第一にして曲を作っているとメジャーからリリースするのは難しいよ。
(Red Hot Chili Peppers / ジョン・フルシアンテ クロスビート2009年3月号)

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