
前回ブログ記事にした内容からして(Nirvana / In Uteroの30周年記念盤とリマスター)、今回の聞き比べは記事にするのが当然の流れのようになってしまいました。
というわけで、30周年記念盤の音質は?
聞き比べたのはHeart Shape BoxとPennyroyal Teaです。
Foobar2000のABXで、場合によってリプレイゲインを使用して聞き比べました。
波形の画像はPennyroyal Teaです。
デジタルデータでいいますと、まずは波形で見ると一目瞭然なのですが30周年記念盤のリマスターを担当したボブ・ウェストン(前回も書きましたが、彼はIn Uteroのレコーディング現場でエンジニアを務めていた数少ない人物の一人。長らくアルビニと共にエンジニアとして働いていましたが、現在は独立している模様。またShellacのメンバーでもあります)は予想外にも音圧を上げてきました。
実際に聞いてみても音が飛んでくるようなアタック感は2023年盤が最も強いです。
まあ音圧上げ過ぎとは思えませんが私のようなアンチ音圧至上主義者からするとなんだかなあと思うわけです。
30周年盤の音質そのものは20周年盤を世襲したような感じでしょうか。
普通に聞き比べると低音が強く感じましたが、リプレイゲインを使用して聞き比べてみるとあまり変わらないように感じました。
ただ、Pennyroyal Teaのギターの音を聞いていると30周年盤の方が若干シャーシャーしている気がします。
中域~高域にかけて少し強いのかもしれません。
私の好みからすると、デジタルで最も好きなのは20周年記念盤ということになります。
ではアナログレコードではどうでしょうか?
(レコードを何回も繰り返し聞き比べるのは難しいので、レコードから録音したファイルを聞き比べています。カートリッジはM97xEを使用しました。)
30周年記念盤をM97xEで聞いてみると、かなり良い音がしました。
Heart Shape Boxではアルビニのスタジオの空気感をも録音してしまうというアンビエント・マジックがわかるような気がします。
以前は私が聞いた中ではSimply Vinyl盤が最高だと思っていましたが、30周年記念盤の方がよいと思います。
ただ残念ながら20周年盤のレコードは持っていないので比較できません。
実はこれが最も私の好みに合っているのかもしれません。
45回転2枚組なんですね。
ただ、20周年盤は現在ではそれなりにプレミア価格で取引されているようです。
買っておけばよかったな。
Nirvana – In Utero (2013, 180 gram, Vinyl) – Discogs
まあ30周年記念盤のレコードはおススメです。
オマケでついてくる10inchには盤Gallons Of Rubbing Alcohol Flow Through The Strip、Marigold、Sappy、Moist Vagina、I Hate Myself And Want To Dieが収録されていますしね。
こうして書くとデジタルもアナログも1993年のオリジナルは立場がないように思われてしまいますでしょうか?
確かに音圧は低めですが、リプレイゲインを使用して聞き比べてみると、最も音が鮮明過ぎてキンキンしてシャーシャーしているのは意外なことに1993年オリジナルです。
正直言うと私は当初リマスターには懐疑的でしたが、ふたを開けてみるとオリジナルの音質は…という感じです。
少しフォローしておくと、こういうのは各個人の好みの問題ですからw
「当時のままのオリジナル」というブランド力は絶大なものがありますし。
まあCDが登場して月日が流れてある程度の技術が確立された90年代中頃の作品はリマスターする必要性をあまり感じないとは思っています。
In Uteroはリマスターなんかせずに1993年盤で押し通すのも良かったかなあと思います。
それに1993年のUSオリジナル盤はクリアーミント盤でコレクションとしては最高ですよ。
ただ私が購入した当初は4000円~5000円ぐらいだった記憶がありますが、今では・・・
過去の投稿 Nirvana / In UteroのUSオリジナルレコード(DGC-24607)の音
Nirvana – In Utero (1993, Clear, Vinyl) – Discogs
そいうわけで、In Uteroの30周年記念盤はレコードがおススメです。
デジタルは高めの音圧が好みなら買いでしょう。
In Uteroの過去記事です。
何年も前のものなんで現在とは考え方が違う部分もあります。
Nirvana / In Utero 20th Anniversary Editionの音質
Nirvana / In UteroのUSオリジナルレコード(DGC-24607)の音
Nirvana / In Uteroのリマスター盤を聞き比べ(2009年ORG盤)

コンニチハ、スティーヴ・アルビニです。
俺の個人的な満足度からするとね。
あのレコード(NirvanaのIn Utero)には俺自身が関わっていたから、あの作品をすごく身近なものに感じてたんだよね。
いじったりする前のほうがいいサウンドだって気がしたよ。
ニルヴァーナが完成品を送ってくれたときにはすぐ聞いたけど、あのマスタリングの具合にはガッカリしたよね。(スティーヴ・アルビニ ロッキングオン2002年5月号)
スティーヴ・アルビニのページ(プロデューサーのコーナー)を更新しました。
次はBig Blackなどのバンドのページを修正するつもりです。
アルビニといえばNirvanaのIn Uteroですが、そろそろ30周年記念でいろいろとリリースされるそうです。
ニルヴァーナ『イン・ユーテロ』30周年記念エディション10/27発売。スーパー・デラックス・エディションには未発表音源53曲を含む全72曲を収録
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The High-Lowsのアルバムがリマスターされて再発されるようですね。
THE HIGH-LOWS、結成25周年を記念してリマスター盤一挙発売
数年前のブルーハーツ祭りと同様に本人たちは一切かかわっていないと思いますが、ハイロウズのレコードは基本的に入手困難で、私は3枚しか持っていないんで今回の再発は嬉しいです。
個人的にはこのリマスターには期待しております。
ハイロウズは「曲は良いけど音が悪いバンド」として真っ先に思いつくバンドの一つですから。
彼らのサウンドのどの部分が悪いかというと音圧を上げ過ぎているところです。
もう明らかに音圧上げ過ぎて音が割れているのがわかる部分もあります。
ハイロウズの活動時期は音圧競争が勃発してピークを迎える辺りと重なるので、今日はハイロウズの音圧を振り返ってみます。
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前々回の予告通り、今回はSoundgardenのBadmotorfingerのリマスター盤の話題です。
去年に25周年記念盤としてリリースされました。
Soundgarden To Release Badmotorfinger 25th Anniversary Edition
このアルバムは名盤とする人も多いですし私も好きなんですが、単なるメタルにしか聞こえないとかセルアウトしたとか、そういう批判もたまに聞こえます。
まさにオルタナとメタルの懸け橋や境界線となったアルバムと言えると思います。 続きを読む >
コンニチハ、Soundgardenのクリス・コーネルです。
今でも覚えてるんだけど、「ラウダー・ザン・ラヴ」がリリースされて間もない頃、日本のレコード会社から送られてきたFAXのメモ欄にこう書いてあったんだ。
「サウンドガーデンについてだが、バンドは気に入った。
アルバムも非常に出来が良い。
もう少し演奏が上手くなりさえすれば、きっと売れるに違いない」(笑)
なぁ、これってレコード会社が一体何を基準にして売る気になるかを示す、実にいい例だろ?
ラジオが曲をオン・エアするのも所詮、同じような基準さ。
マーケットってのはいつだって気紛れなんだ。(Soundgarden / Chris Cornell ミュージックライフ1996年7月号)
クリス・コーネルが逝去して何か月か経ちますが、やはりショックは大きいです。
亡くなったと聞いたときは交通事故とか心臓発作とか脳卒中とか突然死の類だと思ったのですが、自殺と聞いてかなり驚きました。
今にしてみれば精神的に健康だとは言えない歌詞を書いてきた人だからなあとは思うのですが・・・
Soundgardenと言えば去年からリマスター盤を立て続けにリリースしました。
その音質について書こうと思います。
今日は第一弾リリースのLouder Than LoveとDown on the Upsideです。 続きを読む >
最近ではレコード・ブームということもあり過去の名盤がレコードで再発されまくっていますね。
話題に出したい再発盤はいろいろあるんですが、今回注目したいのはPublic Image limitedのMetal Boxです。
パブリック・イメージ・リミテッド(PiL)の『Metal Box』と『Album』が4枚組のスーパー・デラックス・ボックスセットで再発
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今月上旬にこのようなニュースが流れました。
ニール・ヤング、昨今のアナログ盤ブームを「ただの流行りもん」と切り捨てる
キュウソネコカミが歌っているように「レコード聴いてる俺カッケー」てところでしょうか。
私としてはニールの主張には同意できる部分もありますし、異議を申し立てたい部分もあります。
「CD用のマスタリング音源から作ったレコードばかりで、そんなのはただの流行でしかない」っていうのは何となく理解できます。
ただ、ちょっと言い過ぎだとも思います。
CDと酷似した音が出るマスターを使って製作されたレコードでも、レコードの方が良い音で聞こえることが多いからです。
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今日はSoundgardenのSuperunknownのリマスター盤の感想です。
私はスーパーデラックス盤とレコード盤を購入しました。
発売日から約半月遅れでようやく聞くことができました。
詳細はSuperunknown20(オフィシャルサイト)でどうぞ。
最近は反音圧主義なマスタリングが目立つようになってきましたが、Superunknownはどうでしょうか?
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数年前から音質の話題が増えてきたこのブログですが、今日は珍しくゲームの話題です。
映画などにもリマスターという言葉がよく使われるようになりましたが、ゲーム業界でも使われているんですね。
今日話題に出すFINAL FANTASY X | X-2 HD Remasterは楽しめましたが、音楽のリマスターでありがちな「オリジナルから逸脱」ということを考えさせるようなものでした。
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NINとSoundgardenが夏に一緒にツアーをするとのことです。
ナイン・インチ・ネイルズとサウンドガーデン、ジョイント・ツアーが正式決定
両者の20年前の全米チャートについての確執は真実かどうかは知りませんが、数年前にクリス・コーネルのソロアルバムについてトレント・レズナーがTwitter上で非難したことがあったんで、このツアーは意外な感じがしました。
今日は、去年にひっそり?とリリースされたScreaming Life / Foppのリマスター盤などについてです。
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