CDと酷似した音が出るレコードは単なる流行もので価値がないのか?

今月上旬にこのようなニュースが流れました。

ニール・ヤング、昨今のアナログ盤ブームを「ただの流行りもん」と切り捨てる

キュウソネコカミが歌っているように「レコード聴いてる俺カッケー」てところでしょうか。

私としてはニールの主張には同意できる部分もありますし、異議を申し立てたい部分もあります。

「CD用のマスタリング音源から作ったレコードばかりで、そんなのはただの流行でしかない」っていうのは何となく理解できます。
ただ、ちょっと言い過ぎだとも思います。
CDと酷似した音が出るマスターを使って製作されたレコードでも、レコードの方が良い音で聞こえることが多いからです。

その辺については2年前にCDよりもレコードの方が音が良い理由を考えてみるで書いた通りです。
2年後の今でも、レコード再生特有のボカシ効果とレコードの方が音が小さいというのが大きな要因だと思っています。

ですが、ニールの言いたいことも一理あります。
大半のレコードはCDと酷似した音が出ますから。

レコード愛好家は過剰な音圧や、コンプレッサーをかけすぎて奥行がなく立体感が皆無な音を求めていませんが、現在リリースされているレコードはその要求に応えて音質にこだわって製作されていないのが大半です。

レコード再生特有のボカシ効果があるとはいってもクリッピングノイズ(音圧を上げ過ぎて発生するノイズ)や立体感のない平面的な音はどうしようもありません。

たからレコードが流行だから制作している輩が大半で、音にこだわって製作していないという事実を考えればニールが言っていることにも同意でしてしまう部分があります。

CDとレコードで大幅に音が違うアルバムはほんの一握りです。
パッと思いつくのはレッチリのStadium Arcadiumの他には、ジャック・ホワイトのLazaretto、Pearl JamのVitalogyのリマスター盤ですかねえ。
本当に少ないです。
肝心のニール・ヤングの最近のアルバムのレコードは持っていないんで何とも言えません。

まあCD自体がアンチ音圧至上主義で制作されたものならレコードの音がCDと酷似していても良いと思いますが。

今日は前回の記事で良いアルバムだと紹介したtricotのT H Eというアルバムに犠牲?になってもらいましょう。
下の画像はtricotのT H EのLPの音をPCに取り込んだ波形とCDの波形です。

tricotのT H EのLPとCDの波形

CDの方は音圧が高そうだなって感じの波形です。
LPは0dBを超えないように録音したんで、絶えず最大音量が出ている波形ではないです。

この二つを見比べていると似ているんで、ひょっとしてCDと同じような音が出るマスターを使ったのかなあと疑ってしまいます。

まあこのブログ記事のために波形を持ち出しましたが、音は聞くものであって見るもんじゃあないです。
実際に聞き比べてみると、LPとCDは酷似した音が出ます。

CDと同じマスターを使い回しているとは断言するのは難しいですが、CDと酷似した音のマスターから制作されたレコードだといっていいでしょう。
まあCD自体が音圧が高いものの、クリッピングノイズは感じられませんし酷いぐらい平面的な音だとは思えません。

それゆえにレコードの音がCDに酷似していても否定できないかなあとは思います。
最近のレコードの大半はこのパターンですかねえ。
もうちょっと音質にこだわってもらいたいはと思いますけど。

そういうわけでこのレコードは5点満点中、真ん中の3点をつけたいところです。
しかし今回の主題からは多少ハズレますが、内周歪みが酷すぎるとはでは言えないまでも目立つんで、このレコードは音質的には5点満点で2点です。
音質的にはあんまりおススメできないかな。

ただレコードの魅力は音質だけではないんですよね。
総合的な音楽体験ができるのがレコードです。

tricotのT H Eのレコードはホワイトレコードです。
こだわりが感じられます。

tricotのT H EのLP

tricot、再発CDのアナログ盤をライヴ会場限定でリリースすることを発表

このレコードは日本ではライヴ会場限定300枚だそうです。
後は海外のライヴ会場で何枚売られた分でしょうか。
生産枚数自体は少ないようです。

他の2作品は赤と青のレコードで、3色合わせてトリコロールだそうです。
いろいろ考えますねえ。

tricotのT H EのLPのA面

上の画像はA面です。

tricotのT H EのLPのA面

これはB面。
CDを持っていて聞き込んでいる人はすぐ気づくと思いますが、曲順がCDとレコードでは違います。
A面の終わりとB面の始まりを意識したのでしょうか?
ちなみに内周歪みが目立つのはそれぞれの最後の曲、artsickと「おやすみ」です。

tricotのT H EとM97xE

CDと酷似した音が出るレコードにはM97xEというカートリッジがおススメです。
DL-103以上に素朴な音が出ます。
カートリッジで音が変わるのもレコードの魅力です。

そんなこんなで、音質以外にも総合的に判断すればtricotのT H Eのレコードは5点満点中3点でしょうか。
買う価値は十分あると思いますが、入手は難しいかもしれません。

そういうわけでニール・ヤングの話には同意できる部分とそうでない部分があるということで終了です。

コメント

  1. 和哉 より:

    データメインになってしまった時代にアナログな感覚に回帰したくなる人達がいてもおかしくないし理解はできるけど、ぶっちゃけくだらないムーブメントだと思うわ。製作者側もそのあたりは理解していてコレクションとして買いたい人は好きにしてくれ、売れるなら媒体が何だろうがどうでもいい。という印象がある。まぁ・・・結局は自分が好きなものを選べばいいというだけの事だから、レコードのほうが~なんて書かなくても好きならそれを選べばいいしそれを楽しめばいい、ただそれだけの話だわな。

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