PJ Harveyのオフィシャルサイトを見ていて気がついたのですが、2025年はTo Bring You My Loveの30周年なんですね。
今日はそのアルバムに収録されていて、「あなたを海に沈める」と衝撃的なことを歌ったヘヴィな曲Long Snake Moanを紹介します。
ただ、1984年の時点で「あなたを海に沈めたい」と似たようなフレーズを歌った曲が実は日本に存在します。加藤登紀子の「難破船」です。これは1987年の中森明菜ヴァージョンが超有名です。スタジオ音源よりもライヴ音源のほうが情念度は増幅されています。やはり暗い歌は天下一品。
中森明菜/難破船 (Live in ’87・A HUNDRED days at 東京厚生年金会館, 1987.10.17)
ただの失恋ソングと言ってしまえばそれまでなんですがね。もちろん「海に沈める」の意味合いもLong Snake Moanとは違うでしょう。
話がそれてしまったので元に戻します。ポーリーは歌詞もサウンドもヘヴィで奥深い曲です。
PJ Harvey / Long Snake Moan
Long Snake Moan
長い蛇のうめき声duck you under
deep salt water
あなたを海に沈めるbring me lover
all your power
あなたの力をすべて
私にあたえてI’ll be no hell
私は地獄に落ちないout of your spell over,
あなたの呪縛から解き放たれてunder die of pleasure
快楽の下で死ぬin my dreaming
夢の中でyou’ll be drowning
あなたは溺れ死ぬhell’s low and god above
下の悪魔と上の神all drunk on my love
みな私の愛に泥酔しているyou oughta hear my long snake moan
私の長い蛇のうめき声を聞くべきyou oughta see me crawl my room
私が部屋の中を腹ばいで動くを見るべきduck you under
deep salt water
あなたを海に沈めるin my dreaming
夢の中でyou’ll be drowning
あなたは溺死するraise me up lord
主よ、私を立ち上がらせてcall me Lazarus
私をラザロと呼んでhey lord, heal me
主よ、癒してくださいmake ready my veil
ベールを用意してくださいyou oughta hear my long snake moan
私の長い蛇のうめき声を聞くべきyou oughta see me crawl my room
私が部屋の中を腹ばいで動くを見るべきit’s my voodoo working
私のブードゥー教の効果
まず最初に書いておきたいのですが、上記の歌詞はオフィシャルサイトに掲載されている歌詞とは違います。Geniusでも指摘されていますが、オフィシャルサイトの歌詞は実際のものとは違うのでは?という疑念があります。
特に初期の作品は本人が歌詞の公開を望んでいなかったですし、それは今も変わらないのでしょう。オフィシャルサイトに掲載されている歌詞の中で本人が公開を望んでいない曲の歌詞は、おそらくスタッフが掲載しているのでしょう。
大昔にはオフィシャルサイトそのものにそのような説明があったと記憶していたのでキャッシュを調べてみましたが、1998年12月のオフィシャルサイトの記述を見つけました。
Are the lyric transcriptions correct?
They are correct as they can be. Due to Polly’s stance regarding her lyrics and their transcription/interpretation, the transcription process until very recently consisted of a person sitting down with CD and headphones, transcribing what they heard. Now, there is a mailing list that maintains the library of material. If you are interested in being a part of this project, send mail to: scribe-request@pjh.org with a message body of: subscribe [email_address]
歌詞は正確なのでしょうか?
可能な限り正確です。ポリーの歌詞とその書き起こし/解釈に関するスタンスにより、書き起こしのプロセスはごく最近まで、CDとヘッドフォンを片手に人が座って、聞いたものを書き起こすというものでした。現在、資料のライブラリを管理するメーリングリストがあります。このプロジェクトに参加することにご興味がある場合は、scribe-request@pjh.org にメールをお送りください。メッセージ本文には subscribe [email_address] とご記入ください。
以前は聞き取ったものを掲載していたが今はいろいろな資料があると。ですが、つまるところは本人から提供されたものではないのでしょう。それは今も変わらないのでは?
そういうわけで上記の歌詞は私が正しいであろうと思ったものを掲載しています。
次に冒頭のduck you under deep salt waterというフレーズですが、一般的に長らくDunk Youだとされてきたと思いますが、実はDuck Youだと歌っていると判明しました。ただDuckにも液体に浸すという意味があるので、沈めるという訳でいいのかなあと思います。ネイティヴの方(英国人)がDuckとDunkの細かい意味の違いでどのように使い分けているのかは私にはわかりません。
Salt Waterですが、直訳すると塩水なんですが海水という意味合いもありますので、従来どおり「あなたを海に沈める」という解釈をします。
ただ、これにはキリスト教の洗礼の意味も含まれているという説に一理あるような気がするので、単純に「愛しすぎるがゆえに殺したい」という感情を表現したものではないのかもしれません。
全体的に、自分の思いどおりにならない男に対する、心の内側に秘められた悶々とした情念を表現したような印象ですが、単純な表現ではなく抽象的でアーティスティックな歌詞なので解釈は人によって様々だと思います。
日本から出たことがない日本人としてはキリスト教のことが入ってくると、どういう意味合いなのか本当にわからないです。Lord、Lazarus、Veilはキリスト教圏じゃないと細かいニュアンスが理解できません。
もっといえば蛇という生き物に対するイメージも西洋と東洋では違うかもしれません。私は怖いもの、襲いかかってきそうなもの、ゆっくりと動く不気味なものを連想してしまいますが、西洋ではどうなんですかね。
そういうわけで、このコーナーで取り上げておきながら「細かいところは解釈不可能」という結論になってしまいました。
ただ、前述したように全体的には男性に対する内に秘めたドロドロとした、本来なら隠しておくべき感情を表現した曲だという印象です。怖いなあと思います。ヴードゥー教の呪いでもかけたのでしょうか。
まあ30年経った現在では、こういうことを歌うのも物珍しくはなくなりましたけどね。日本ではCoccoが登場してきましたし、それ以前にも中島みゆきが・・・といったところでしょうか。まあ私は中島みゆきに詳しくはないのでイメージが先行しておりますが。
皆さんはどう解釈しますでしょうか。



コメント