Butthole Surfers (バットホール・サーファーズ)

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最終更新日 2023年3月26日

Butthole Surfers (バットホール・サーファーズ)のアルバム紹介

Butthole Surfers (バットホール・サーファーズ)の概要

テキサス州サン・アントニオで出会ったギビー・ハインズとポール・レアリーが1981年に結成したバンド。
Butthole(肛門)という言葉をバンド名に使用していることや、アルバムのジャケットが悪趣味なことからして、なんとなくどんなバンドか想像できるだろうか?

音楽性は、簡単に言ってしまえばBlack Flagなどのアンダーグラウンドなパンクと、The 13th Floor Elevatorsをはじめとする彼らの地元のテキサス州のサイケデリック・ロックとの融合といえる。
ただ浮遊感のあるサイケといっても狂人的で猟奇的。
聞いているこちらの頭がおかしくなるような音楽だ。
またテキサス出身らしくカントリー・ミュージックからの影響もあるし、R.E.Mのような歌モノの要素も取り入れており、後期になるとポップ化、エレクトロ化していった。

Butthole Surfers 29曲(You Tube)

音楽性もさることながら、変態、危険、下品、といった言葉を連想させる混沌としたライヴパフォーマンスと行動もこのバンドの魅力の一つだ。

サンアントニオの新聞が、僕らがオースティンにいるのを知ってライブ写真を掲載した。
僕は裸で腰に国旗を巻いている。
しかもそれに火が。
そんな写真を日曜版の娯楽面に載せたのさ。
「ロック史上最悪のバンド。」
しかも僕らの名前は「ケツの穴波乗り野郎ども」(Butthole Surfers / ギビー・ハインズ / Sonic Highwaysより)

主な奇行は裸になる、女装する、ストリッパーを出演させる、ライフルで空砲を撃つ、シンバルなどに火をつける、交通事故現場などの写真を映し出す、大量の洗濯バサミを服や髪につける、ぬいぐるみをばらばらにするなど。
1993年の大阪クアトロでの来日公演では、興奮してステージに上がってきた女性をギビーがぶん殴るという伝説を残している。
また、現在のところ最後の来日公演となっている2001年のフジロックではシンバルを燃やしていたとのことだ。

年齢制限のないショウに裸の女性を出演させる。
クラブのオーナーたちは当然それをやめさせようとする。
ギビーは怒って火をつけた。(LCD Soundsystem / ジェームス・マーフィー / Sonic Highwaysより)

このような常人離れした音楽と行動はテキサスという土地から生み出されたものなのだろうか?

やっぱ俺たち、テキサス出身だからね(笑)。
アメリカじゃ、テキサスって変人の集まりみたいなところなんだよ。
めちゃくちゃ暑いから、みんな脳みそがどこかおかしくなってて……だから俺たちの音楽も、いつも他とはどこか違っていたんだと思う。
ニューヨークやロサンゼルス出身のバンドよりも、もっとだらけた、ヘンテコな音だしね。(キング・コフィー / クロスビート2001年11月号)

1981年のバンド結成後、Dead Kennedysのジェロ・ビアフラのレーベルであるAlternative Tentaclesから作品をリリース。
その後Touch and Goに移籍してアルバムを次々とリリースし、奇抜なライヴパフォーマンスも評判を呼んだ。

1991年には第一回目のロラパルーザのメインステージに出演。
1992年にはメジャーレーベルのキャピタルと契約を結んだ。
このような危険なカルト・バンドがメジャーデビューしたという事実はオルタナティヴ・ムーブメントを象徴していた出来事の一つだと言って良いだろう。

1995年にタッチアンドゴーが過去の作品を効果的にプロモーションして売ろうとしていないとして訴訟を起こし、1999年に勝訴して作品の所有権はバンドのレーベルLatino Buggerveilが獲得し、再発されることとなった。

またキャピタルとも問題を抱え、1998年にはAfter the Astronautというアルバムのリリースを拒否され、2001年に他のレーベルからWeird Revolutionというタイトルでリリースされた。
以降はバンドとしての活動が徐々に下火となっていき、2023年現在では活動しているのかどうか不明となっている。

関連リンク


Butthole Surfers (バットホール・サーファーズ)のアルバム紹介

1.スタジオアルバム

Butthole Surfers(Brown Reason To Live)(Pee Pee the Sailor) + Live Pcppep

1983年にオルタナティヴ・テンタクルスからリリースされたEPと翌年にリリースされたライヴアルバムLive PCPPEPを一枚にまとめたもの。
EPの呼び名は諸説あり、Butthole Surfers、Brown Reason To Live、Pee Pee the Sailorの3つのうちどれが正しいのかよくわからない。

後の作品と比べるとハードなギターが目立つ荒削りな印象だが、奇妙で独特なサイケデリアは既に健在。
効果音のような奇妙なギターとサックスが特徴のSomethingとBar-B-Q Pope、混沌としすぎていてこちらの頭がおかしくなりそうなThe Revenge Of Anus Presleyがおススメの曲。

Nirvanaのカート・コバーンは日記で列挙したお気に入りの50枚の中に今作を入れた。

Butthole Surfers + Live Pcppep(YouTube)

Psychic… Powerless… Another Man’s Sac

1984年にリリースされた1stアルバム。
オルタナティヴ・テンタクルスとはいろいろあったようで、Touch and Goからリリースされた。

狂人的でわけのわからないサイケデリックというこのバンドの特徴が凝縮された代表作。

猟奇的なConcubine、ポップでアップテンポながらも奇抜なDum Dum、他にもブルースやサーフロック、カントリーの要素を取り入れ独特のサイケデリアを築き上げている。
中でもサックスと絶叫が一体となって襲ってくる不可思議なCowboy Bobは圧巻だ。

埋もれさせてしまうのは惜しい名盤なので是非とも聞いていただきたい。

Psychic… Powerless… Another Man’s Sac(YouTube)

Rembrandt Pussyhorse

1986年の2ndアルバム。

前作とは印象が異なり、変態的サイケデリックというよりは優等生によるエクスペリメンタルといった趣だ。
バイオリンやオルガンなどが使用されているのも特徴か。

Creep in the Cellar、American Woman、Waiting for Jimmy to Kick、Perryがおススメの曲

厳密には9曲目までがRembrandt Pussyhorseの曲で、10曲目以降はCream Corn from the Socket of DavisというEPに収録されていた曲がボーナストラックとして収録されたもの。

Rembrandt Pussyhorse(YouTube)

Locust Abortion Technician

「イナゴの堕胎専門家」というわけのわからないタイトルが付けられた1987年作。
一般的には最高傑作といわれており、ポール・レアリーも1993年のインタビューで最高傑作に挙げた(クロスビート1993年7月号)。

Black SabbathのSweet Leafから拝借したSweat Loafという曲から始まり、その後もBlack Sabbathとパンクとサイケデリックをごちゃ混ぜにしたような曲が続く。
メタルとパンクの融合という点ではBlack Flagなどとも共通する点であり、先駆け的なアルバムともいえる。

スピードを落としたヴォーカルが気持ち悪いGraveyard、頭がおかしくなりそうなサイケデリアのHayとU.S.S.A.、民謡的なKuntz、ヘヴィな22 Going On 23が印象的。

Nirvanaのカート・コバーンは自身の日記の中で1stEPに続いてこのアルバムもお気に入りの50枚の中に挙げている。

Locust Abortion Technician(YouTube)

Hairway to Steven

Led ZeppelinのStairway to Heavenを意識して名付けられたであろう1988年作。

ジャケットのセンスは最悪で、12分にも及ぶ1曲目のJimiという気持ち悪くて聞いているこちらの頭がおかしくなりそうな彼ららしい曲で幕を開けるものの、他の収録曲は親しみやすく「普通」を感じさせるものが多い。
アコギが多用されているのが特徴としてあげられる。

I Saw an X-Ray of a Girl Passing Gas、Rocky、Julio Iglesiasはポップでよい曲だと思う。
もちろんそれ一辺倒ではなくBackassなどカオティックな曲も素晴らしい。

これまでのインディ時代と、これからのメジャー時代の中間に位置するアルバムだという評価はピッタリだと思うし、このバンドの入門用として適していると思う。

このアルバムを最後にツインドラマーの片割れであったテレサ・ネルヴォーザが脱退し、以降はドラマー1人編成でバンドを続けることとなった。

Hairway to Steven(YouTube)

Piouhgd / Widowmaker

タッチ・アンド・ゴーからラフ・トレードに移籍してリリースされた1991年作。
現在で回っている再発盤には1989年のWidowermakerというEPの4曲も収録されている。

Piouhgdは狂人的な面よりも風変わりなポップといった部分が印象的な作品だ。
ヘンテコなポップソングのRevolutionとGolden Showers、ウェスタン・カントリーなLonesome Bulldog、DonovanのカバーであるThe Hurdy Gurdy Manはオリジナルを面白おかしく不気味にサイケ感を増幅させ、The Jesus and Mary ChainのNever Understandの歌詞を変えたカバー曲Somethingも見事にButthole Surfers色に染め上げている。

Piouhgdの発音について聞かれたポール・レアリーは、「ナバホ族(アメリカンインディアンの部族)の舌打ち音の表現なので読めるものではない。」と返答した(クロスビート1993年7月号)。

WidowermakerはTouch and Goから最後にリリースされた作品で、1stアルバムを連想するほどアグレッシブで衝動的なEPだ。

Piouhgd / Widowmakerの他のフォーマット
Piouhgd / Widowmaker(YouTube)

Independent Worm Saloon

前作リリース直後にRough Trade Recordsが破産してしまったため、メジャーレーベルのキャピタルと契約を結び制作されたメジャーデビュー作でリリースは1993年。

Led Zeppelinのジョン・ポール・ジョーンズがプロデューサーを務め、その影響でハードロック、メタルの要素が強く出たアルバムになった。
Butthole Surfers流の風変わりで狂気染みたロックンロールに仕上がっているものの、アップテンポで聴きやすい曲が多く入門に最適だ。

Who Was in My Room Last Night?(X Japanのhideが自身のソロ活動でパクった曲)、Goofy’s Concern、Dog Inside Your Body、Strawberry、Dancing Fool、Dust Devilのようなハードな曲だけでなく、ウェスタンカントリーなThe Wooden SongとThe Ballad of Naked Man、REM風歌モノのTongue、何となくGuns N’ RosesのBad Obsessionを連想してしまうThe Annoying Songなども聞きどころ。

圧巻(最悪?)なのはClean It Upで、前半部分はゲロを吐くときの呻き声となっており、ギターでもオエーという呻き声を再現しているカオティックな曲。
また、日本盤ボーナストラックのBeat the Pressもゲロを吐くときの呻き声だ。

最も好きなアルバムに挙げる人も多いだろうが、このバンドの最大の特徴であるサイケデリックを排除した方向性について本人たちはあまり気に入っていないようだ。

ジョン・ポール・ジョーンズは、俺たちが持ってきたサイケデリックな曲よりも、ロックっぽいものの方が気に入ったってわけ。
7万ドルも払ってるご立派なプロデューサーの意見だ、ノーとは言えないもんね。
おとなしく従ったよ。(ロッキングオン1993年12月号 ポール・レアリー)

ギビーにいたっては「あまりうまくいかなかった。音もゴミみたいな仕上がりだった。」と回想し(Electriclarrylandの日本盤ライナーノーツより)、人間的にもジョン・ポール・ジョーンズと問題を抱えていたようだ。

Independent Worm Saloonの他のフォーマット
Independent Worm Saloon(YouTube)

Electriclarryland

1996年のメジャー2作目。
前作リリース後に長らくベーシストとして在籍してきたジェフ・ピンカスが脱退したが正式メンバーは補充せずに3人編成で制作された。

このアルバムの特徴は数曲とはいえラップ・ヒップホップ・ダンスミュージックへの傾倒だろう。
「オルタナティヴ・ロックが新しい商標になってしまった今、真にパンクでありオルタナティヴな音楽の可能性はテクノにある(ロッキングオン1996年8月号)」という持論の元、様々な音楽を吸収してバンドを新たな境地へと導いた作品だといえる。
ラップ調のPepperはバンド史上最大のヒット曲となった。

だが全体的にポップ化したとの印象は否めず、彼らの特徴である狂人性や変態的な部分があまり感じれなくなったのは事実。
Cough Syrupの後半の怪しい弦楽器の調べやJingle of a Dog Collarの緊張感、エクスペリメンタルなMy Brother’s Wifeなどもあるのだがポップな印象の方が上回ってしまっている。

ポップ化について問われたギビーはどこまで本気か冗談なのかは不明だが次のように答えている。

俺らがレコードを作るに当たって狙ってるのはステイーヴ・アルビニとソニーやEMIの株主の両方を喜ばすってことなんだよ。
そんなことが可能なんであればな、ガハハハ。
こいつは難儀なポジションだぜ。
両方を満足させなきゃいけないんだからな。
悪趣味の権化と、どっかの核兵器の制御装置を製造してる企業の株主と。ガハハハハ。
俺らとしては、その真ん中あたりを狙いたいと思ってるんだ。(クロスビート1996年1月号)

日本盤のアルバムジャケットはかわいい動物に差し替えられているが、これは表ジャケットに問題があるというより裏ジャケットの3本足の犬が原因だったようだ。
アルバムタイトルは元々「オクラホマ」だったが、「オクラホマ」という言葉は商標登録されているため訴訟をおそれたキャピタルが変更を指示した結果、ジミ・ヘンドリックスのElectric LadylandをパロったElectriclarrylandとなった経緯がある。

Electriclarrylandの他のフォーマット
Electriclarryland(YouTube)

Weird Revolution

2001年作。
1998年にAfter the Astronautというアルバムをリリースする計画があったがキャピタルに拒否されてしまったため、それらに収録される予定だった曲の大半は今作に収録されている。

ハードロックをベースとし、前作で垣間見せたエレクトロやラップ・ヒップホップを全面的に押し出したものとなった。
またインドで録音してきたという東洋の民族音楽を連想させる音も使用されている。

このアルバムに影響している部分でいうと、確かにここ数年間で新しくて最も面白いものはエレクトロニック・ミュージックとDJサブ・カルチャーから出てきていると思う。
しかも状況が80年代初頭のパンク・ロック/ハードコア・シーンと似ていると思うんだ。
非常にアンダーグラウンドな音楽であって、専門のレコード店に行かないと手に入れることができないし、アンダーグラウンドな雑誌やファンジンを読まないと知識も得られない。
ライヴに行く前にいろいろ勉強して準備しないといけない上、そうしないとそういう音楽が存在しているということさえもわからない。
昔のパンク・ロック時代を思い出させてくれる。(キング・コフィー / クロスビート2001年11月号)

当時席巻していたラップメタルに共通点こそあれ悪いアルバムだとは思えないが非常にハードでポップなため、このバンド特有の奇妙で理解不可能なサイケデリアが感じられないのが残念だ。
同じことを繰り返さず進化しようという姿勢は素晴らしいと思うのだが。

Weird Revolutionの他のフォーマット
Weird Revolution(YouTube)

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