ジョン復帰後のRed Hot Chili PeppersとI’m With Youの感想
コンニチハ、ジョン・フルシアンテです。
音楽を作るのは大好きだけど、大きなビジネス組織が絡んでくるとプレッシャーがあるんだ。
音楽を作りたい欲求が締め切りに間に合わせて商品を出したい連中の欲求に邪魔されてしまう。
そういうプレッシャーがあると音楽を作るのが楽しくなくなってしまうし、疲れることがある。
レッチリは世の中でも特定の捉えられ方をしてるし、ファンが期待してるものも決まってるんだ。
だからレッチリのために曲を作るときは自分のアイデアを事前に編集しなくちゃいけない。
俺が自由にアイデアを提供してるわけじゃなくて、このバンドのエネルギー、意図、そして境界線の中で自分のアイデアを提供してるってわけさ。
レッチリみたいにラジオバンドとして知られてると、こういう曲をやっちゃいけないって枠が決められるだろ?
ラジオでどういう曲が流れるか、ファンがどういう曲を気に入るかという既成概念があるからね。
だから、ソロよりもレッチリで活動するときの方が自分の中で葛藤があるよね。
レッチリの場合は「これは良い曲か?」という基準が一番大事だし、良い曲をアルバムの先の方に入れたりするんだ。
メジャーからリリースすると、そういう考え方をしないといけないんだ。
それにレーベルが求めていることをしたくないし、彼らが売りやすい作品を作りたいわけでもない。
そういう意味で、メジャーから出さないことが僕にとって当たり前だったんだ。
車の中でノリノリになって聞く音楽とか、散歩しながらiPodで聞く音楽とか、通勤するときに聞く音楽は作りたくないんだ。
でも音楽を日常のBGMとして使っている人たちがCDを買う客層なんだよ。
レッチリでは凄くキャッチーでリスナーを引き寄せるような曲はさんざん作ったんだ。
だから自分の音楽を使って、リスナーを積極的に引き寄せようという意図はないんだ。(クロスビート2009年3月号とThe Empyreanのライナーから引用)
コンニチハ以下がちょっと長くなりましたが、今日はレッチリ関連です。
新作のI’m With Youがリリースされましたが、Twitterでつぶやいたような感想です。
まあその前にジョン復帰後のレッチリをちょっと振り返ります。
Californicationってもう10年以上前なんですね。
ついこの間のように思ってしまいます。
この頃からレッチリは大人になったとか、Eaglesのように西海岸バンド特有の哀愁感を漂わせるようになったとか言われていた気がします。
Californicationはよく聞いたし、今聞いても素晴らしいアルバムだと思います。
ジョンが復帰したものの従来とは全く同じではなく進化したって感じでね。
武道館での来日公演も行きました。
フリーが尻出し未遂していた記憶があります。
続いてBy The Wayですが、当時は結構気に入っていました。
来日公演にも行きましたが、印象に残っているのはアンソニーの歌が下手すぎってことです。
今聞くと微妙なアルバムです。
メロディアスな路線を更に押し進めて、ミドル・スローテンポのバラードみたいな曲を連発するのはね。
特に日本人はこういうメロディアスなのに弱いんで、日本で人気が大爆発みたいに言われていた気がします。
続く2006年のStadium Arcadiumリリース時には衝撃的な事実が明かされました。
フリーがBy The Way制作時に脱退を考えていたと。
良く言われたのが、バラードみたいな曲が増えたのが原因で、フリーのベースが暴れる機会が減り、居場所をなくしてしまったのだと。
Stadium Arcadiumはジョン復帰後の集大成って感じです。
土台は哀愁感ですが、ファンキーな曲もありますし。
確かSnoozerだったと思いますが、Stadium Arcadiumはメロディアスな路線に進みたいジョンとファンキーな路線に進みたいフリーの妥協点みたいなレビューを書いていました。
私自身は、当時は凄いアルバムだと思ったんで、そのレビューには笑ってしまいましたが、聞けば聞くほど冒険不足で保守的なスタジアムバンドのアルバムだという思いが強くなり、そのSnoozerの分析もあながち間違っていないかなあと思うようになりました。
まあメロディは相変わらず良いんですが。
世界的にはどうだか知りませんが、日本では人気が最高潮になった感があります。
元々、武道館クラスでライヴを行えるバンドでしたが、遂に東京ドーム。
私は行っていません。
フェスでもないのに高い金払って音の悪い野球場で遙か遠くで演奏しているバンドを見るのは馬鹿らしいと思ったからです。
この頃からかなあ、レッチリに対して疑問符が浮かぶようになったのは。
2009年、ジョン・フルシアンテが退屈になったレッチリとは対照的に素晴らしいソロアルバムThe Empyreanをリリースします。
このときのインタビューで目立ったのはレッチリでの活動についてのネガティブな発言でした。
それがコンニチハ以下。
ジョン・フルシアンテのThe Empyreanと俺のレッチリ限界説
この記事は未だにアクセス数が多いようなんですが、当時の私はそう思っていました。
そして珍しく私の予感が当たり、その年の秋頃にジョン脱退の噂が蔓延し、正式にジョンの脱退がアナウンスされました。実際にはThe Empyrean時には脱退していたようですが。
肝心のジョンがビックなバンドでの活動が嫌になってしまったと。
それで新たなギタリストが加入して今回のI’m With Youがリリースされたわけですが・・・
「ファンが期待してるものも決まってる」というプレッシャーを背負わざるをえないレッチリですが、ギタリストが変わるって事で従来とは違う音楽路線に進みやすかったと思います。
One Hot Mimuteみたいにね。
退屈なスタジアムバンドから脱却するチャンスだったわけです。
個人的にはこの辺を期待していました。
ですがI’m With Youは私の期待を見事に打ち砕いてくれました。
昔のようにファンキーな路線でもあり、ジョン復帰後のようにメロディアスな路線でもあり、多少なりとも新たな挑戦をしていると思いますが、大胆さに欠けます。
つまり、全てにおいて中途半端なんですよ。
フリーのベース信者にもメロディが気に入っている人にも私のように路線変更を望む人にも、みんなに良い顔してあらゆるレッチリファンに媚を売っているような。
一体レッチリはどこに向かっているのでしょうか?
今回は残念ですが、まあ自作には期待しています。