コンニチハ、イギー・ポップです。
ミュージシャン仲間も、若いファンにもずっと言われ続けてきたことなんだ。
「ミックスし直すつもりはないのか?」ってね。
Raw Powerがアナログ盤からCDで再発された当時、音が酷くて苦情がとても多かった。
確かにレコードと比べて最悪だったよ。
自分でもあのサウンドを聞いたとき、低音が消えてるしパワーも伝わってこないじゃないか、と心の中でずっと納得できない部分があった。
CD化されて、欠けてしまったものの方が多いなんてね。
・・・
でも、後になっていじり直すことだけは本当はしたくなかった。
過去に遡って、自分がやってきた仕事を、まるで死体を墓場から掘り返して手を加えるようで、変えるのはおかしいと思ってたからね。
一度、完成させたものなんだろ?!
そしたら、ありのままの姿で存在すべきだっていうポリシーがある。
・・・
(ロリンズ・バンドのメンバーが、ソニーが管理していたマスターテープのコピーをたまたま発見してから)次に俺が知ったのはこうさ。「本人がいてもいなくても、ソニーはリリースするつもりだ」って(笑)。
ソニーも正式にオファーしてくれたし、その提案も面白そうだった。
「スタジオに来てもらって、あなたが気に入るようにどんどん指示して下さい」って調子で、これじゃ絶対に断れないと思ったよ。(The Stooges / Raw Powerのライナーから抜粋)
ちょっとコンニチハ以下が長くなりましたが、今日は昔の作品から「当時の音」が失われる瞬間を考えてみます。
リマスターという言葉を良く耳にするかと思います。
ウチのサイト関連で言えば、去年はJesus Lizard、Pearl Jam、Nirvanaのリマスター作品がリリースされました。
先日話題に出したPavementのデラックスエディションもリマスターされています。
ですが、リマスターって何?と言われても明確に説明できない自分に気がついたので色々勉強していましたが、色んなページを見るとそれぞれ書いてあることが細かいところで違うようで難しいです。
だからまだ完全に理解できていません。
でも面白いことがわかってきました。
リマスターすると「当時の音」が失われるとの批判がありますが、それは違うんじゃないかと。
昨日は否定的なことを書いたのでリンクし辛いのですが、面倒だ信じてしまおうWikipediaってことでw
Wikipedia レコード 他の類似媒体との比較
そこには、「同じマスターテープでCDとレコードを生産しても同じ音にならない」と書いてあります。
この話はどこかで聞いたことがあるなあと思い、記憶を辿ってみたところThe Stoogesのライナーに書いてあったと思い出しました。
イギーの発言と照らし合わせればWikipediaは正しいと言えるでしょう。
つまり、CD登場前のレコードしか存在しなかった時代の作品に限っていえば、レコードがCD化された時点で「当時の音」が失われているってことです。
リマスターするしない以前の問題です。
しかも音質は悪くなるという・・・
ウチのサイトでいえば80年代のアルバム、例えばSonic Youthの初期のアルバム辺りでしょうか。
今度聞き比べてみようかなあ。
90年代ではどうでしょうかねえ。
この頃になると、CD用とレコード用のマスターテープを別に作っているのかなあ?
Beatlesのリマスターが話題になりましたが、まあ好みの問題もあるのですが結局のところオリジナルレコードが一番良いという意見もチラホラ見かけます。
まあBeatlesのレコードはかなり奥が深くてマニアックです。
ビートルズのレコード雑感
このサイト様の「レコード製造方法・製造時期・製造時のソースで音が変わる?」という部分を読むと奥が深いなあと。
少し引用させていただきます。
「BeatlesのオリジナルアルバムがCD化されたあとの1987年頃から以降のLPはUKも含めてほとんどがCDソースと同じマスターテープでLPを製造しているので、アナログ盤ならどれでも良いというわけにはいきません。」
これは冒頭のStoogesとは全く逆の現象でしょうか。
CD化にともないリマスターされたようですが、そのCD用にリマスターされたマスターテープからレコードが製作されたという・・・
まあ本当に「当時の音」を追及したかったら、当時のスピーカーやアンプで聞くべきだとか、色々とキリがないです。
StoogesのRaw Powerですが、1997年に墓場から掘り返されて手を加えられています。
ですが、イギーが目指したのは「当時の音」ではありませんでした。
当時の予算や機材で残すことが不可能だったStoogesのパワフルさを押し出したかったようです。
Raw Powerはリマスターではなくリミックスです。
まあリミックスされればリマスターもするんですが。
詳細は省略しますが、マスタリングの前に行われるミックスダウンという作業からやり直しています。
各楽器の音量も変えられますし、エフェクトをかけることもできます。
Search and Destroyですと、8人の男たちがチャンバラしているときの音が入っているそうですが、リミックス盤ではその音量を下げたそうです。
ですからリミックスという作業はリマスター以上に激変します。
私はデヴィッド・ボウイがミックスしたオリジナルレコードも、そのCDも持っていないのでなんともいえません。
まあStoogesの残る二人は、Raw Power(Wikipedia)によるとデヴィッド・ボウイのミックスの方が良いと言っていたようですけど。
イギーのリミックス盤以降は「当時の音」に最も近いであろうデヴィッド・ボウイのオリジナルミックスCDは廃盤になっていて、聞くことができませんでした。
ですが今年に入ってこんなニュースが。
IGGY & THE STOOGESの『Raw Power』が豪華仕様でリイシュー!
「現在廃盤となっているデヴィッド・ボウイのオリジナル・ミックスによるヴァージョンをリマスターしたもの」と書いてあるので、「当時の音」に近い音源を聞くことが可能になりそうです。
チャンバラの音も良く聞こえるでしょうw
かなり長くなってしまいましたが今日はこれで終わりです。
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