Jane’s Addiction (ジェーンズ・アディクション)、Porno For Pyros(ポルノ・フォー・パイロス)

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Jane’s Addiction (ジェーンズ・アディクション)のアルバム紹介

Jane’s Addiction (ジェーンズ・アディクション)の概要

オルタナティヴ・ムーブメントの中ではNirvanaに匹敵する功績を残したバンド。
85年に結成。
LAや南カリフォルニアのクラブを中心に活動していたようだ。

LAといえば派手なHR/HMを連想してしまうが、FishboneやRed Hot Chili Peppersと共に異質のバンドと認識され、カルト的な人気を誇っていた。

ジェーンズの特徴はメタル・ファンクと形容される音楽性だろう。
HR/HMのようだが何処かしらファンクやサイケデリック、プログレなど様々な影響を感じさせる。
ペリー・ファレルの歌詞だけでなくサウンドだけでも知的な何かを感じることができ、当時の主流だったパーティー三昧なメタルバンドとは程遠い。

Jane’s Addiction 16曲

ジェーンズ・アディクションはロックの歴史においても非常に重要なバンドなんだ。
特にレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンにとってはそういうバンドなんだよ。
なぜなら、ジェーンズが出てきて初めて、ヘヴィなサウンドを持った音楽でも知的な内容を持っていても構わなくなったからなんだ。

ジェーンズはブラック・サバス、ツェッペリン風のリフを弾きながら、歌っている中身はとても知的だったよね。
龍がどうしたこうしたとか、性差別的な内容でもなければ、女だ、車だってもんじゃなくて、そこには意味があった。

オマケにそれが人気があったってことが何よりも大きかったね。
あれでやっとレーベルの人間も、ヘヴィでアグレッシヴなものでも売れる、グラムもどきじゃなくても良いんだってことに気がついたんだ。
(Rage Against The Machine / トム・モレロ ロッキングオン1996年5月号から引用)

FishboneやRed Hot Chili Peppers、Faith No Moreと同様にクロスオーバー、ミクスチャーの先駆者バンドの一つといっていいだろう。
ただし、ラップの要素はないので90年代後半にミクスチャーと呼ばれたバンドの音楽性を連想すると肩透かしをくらうので注意してほしい。

また陰鬱なサウンド一辺倒というわけでもない。
喜怒哀楽全てを吐き出したようなものだ。

俺はレディオヘッド大好きだし、すごいバンドだと思うし、すごく尊敬してるんだけど、俺の考えでいえば、何かを祝福しているわけじゃない。
確かにサウンドやアプローチは変わってるのかもしれないけど、つまるところ彼らの描こうとしていることって、俺から見たら全部同じで、人間の悲しみだけなんだ。

それが俺たちと違うところで、ジェーンズ・アディクションっていうのは、人間としてのコンディションすべてを描こうとしているわけで、それは悲しみであり、幸せであり、怒りであり、喜びであり、パーティーであり、祝福であり、そして、セックスであり、俺たちのバンドにはそのすべてがある。
俺達は、人生に対してあまりに同情的で一つのことだけを描き続けるなんて無理なんだ。
(Jane’s Addiction / デイヴ・ナヴァロ ロッキングオン2003年9月号から引用)

インディでライヴアルバムをリリースした後、88年に1stアルバムNothing’s Shockingでメジャーデビューを飾り、90年に2ndアルバムRitual de lo Habitualを全米トップ20にランクインさせるも、91年に解散。
理由は人間関係的なもので、特にペリーとギタリストのデイヴ・ナヴァロ、ペリーとベースのエリック・エイヴェリーの対立が酷かったらしい。

しかしながら、彼等が解散ツアーとして打ち立てたロラパルーザは、オルタナティヴ・ムーブメントに多大な貢献をすることになる。
詳しくはLollapalooza(ロラパルーザ)を見て欲しい。

結果的にオルタナが本格的にブレイクし始めた年に解散してしまい、特に日本ではロラパルーザを始めたバンドとして知られている感があり、彼らの音楽が正当に評価されていないことも多い。
是非とも一聴をオススメする。

解散後は、ペリーとドラマーのスティーヴン・パーキンスはPorno For Pyrosというバンドを結成し、結果的にオルタナムーヴメント期はこのバンドで活動することとなった。
音楽性はハードでへヴィな面よりも民族音楽、サイケデリック、アコースティック、ファンクなどの要素を前面に出したものであった。
WoodStock94にも出演し、音楽的にも商業的にもそれなりの成功を収めた。

Porno For Pyros 7曲

デイヴはレッチリに数年在籍した後ソロアルバムをリリースした。

97年には単発的に再結成し、ベーシストにレッチリのフリーを迎え、新曲を2曲収録したコンピレーションアルバムKettle Whistleをリリース。
2001年には再び再結成し、2002年にはフジロックで初来日を果たす。
2003年にはStraysというアルバムをリリースしロラパルーザを復活させるも、2004年にバンドは再び解散。
2008年、NMEアワーズ授賞式でオリジナルメンバー4人で一夜限りの再結成がきっかけとなり再び本格的な再結成。

このように解散と再結成を繰り返しながら活動しているが、やはりメンバー間の人間関係、折り合いが非常に悪いようだ。

(Jane’s Addictionと一緒にスタジオで作業して)数年前になぜJane’s Addictionが解散したのか、その理由を直接目にするようになった。
しかし、4人の異なった個性が同じ部屋にいると驚くべきバンドになるのを見た。
(Nine Inch Nails / トレント・レズナー 2009年2月の活動休止宣言から引用)

メンバーはお互いを憎みあっているが、共同で作業を行うと驚くべき創造力を発揮するバンドなのだろうか。

2011年にリリースされたアルバムThe Great Escape Artist以降は目立ったリリースはないが、2020年現在Jane’s Addictionとして活動は続いている。

関連リンク


Jane’s Addiction (ジェーンズ・アディクション)のアルバム紹介

1.スタジオアルバム

Nothing’s Shocking

88年にリリースされた1stアルバムにしてメジャーデビューアルバム。。
結合双生児のマネキンのジャケットが問題視された。

音楽性の基盤にはハードロック・メタルだが、当時主流だったメタルと一線を画していたのは、ファンクやサイケデリックなどにも影響を受けた音楽性と、ペリー・ファレルの知性を感じさせる甲高いヴォーカルの存在だろう。

へヴィで壮大なOcean Size、父親の暴力がテーマでサウンドもへヴィなHad a Dad、「セックスは暴力」と連呼するTed, Just Admit It、穏やかなSummertime Rolls、重苦しいサウンドとペリーの甲高い声がマッチしたMountain Song、レッチリのフリーがトランペットで参加したIdiot Rules、アコースティックなJane Saysなど良い曲がたくさん詰まっている。

ただし、Jane’s Addictionの作品全般に言えることだが、爆音で暴れられればいいという体育会系へヴィネスを期待するなら手を出さない方が良い。

アイデアの多彩さでは一般的に最高傑作とされている次作に及ばないものの、このアルバムも傑作だ。

Nothing’s Shocking収録曲の試聴リンク
Nothing’s Shockingのフォーマット一覧

Ritual de lo Habitual

90年リリースで、一般的にこのバンドの最高傑作だと言われている。

このアルバムもジャケットが問題視され、今回はジャケット改訂盤も制作されたが、米国憲法の表現の自由を規定した条文が印刷された皮肉が込められたものだった。

序盤3曲はハードでアップテンポ、4人のエネルギーの衝突が素晴らしい効果を上げている。
4人とも凄いのだが、中でもデイヴ・ナヴァロの混沌としたギターは素晴らしい。

飛び跳ねるようなリズムのピアノが印象的なObviousと楽しく踊れそうなBeen Caught Stealingを挟んで、後半はパンク、メタル、ファンク、プログレ、サイケ、民族音楽、クラシックなど様々な音楽性を飲み込んだ壮大でアーティスティックな曲が展開される。

特に10分にもおよぶThree Daysと、こちらも8分もあるThen She Didが特にお勧めしたい曲だ。

90年代を代表する一枚なので是非ともじっくり味わっていただきたい。

Ritual de lo Habitual収録曲の試聴リンク
Ritual de lo Habitualのフォーマット一覧

Strays

2003年の復活作。

Nothing’s Shockingの延長上のようなアルバム。
Ritual de lo Habitualのような多彩さは感じられずへヴィなサウンドが印象的だ。

1曲目のTrue Natureのデイヴ・ナヴァロのへヴィなギターリフを聞くと、Ritual De Lo Habitualリリースから13年経った2003年には彼らの音楽性が珍しいものではなく普通になってしまい、追従者の影に埋もれてしまった悲劇の先駆者だと思ってしまう。

ただアルバムを聞き進めていくと、やはりJane’s Addictionならではの知的なへヴィネスは健在だとわかる。
Just Because、The Riches、Suffer Someが特におススメの曲だ。

全体的には傑作でも駄作でもないまあまあなデキだ。

Strays収録曲の試聴リンク
Straysのフォーマット一覧

The Great Escape Artist

前作から解散と再結成、オリジナルベーシストのエリック離脱を経て2011年にリリースされたアルバム。

へヴィなギターを土台に様々な要素をミックスして風変わりな音楽を生み出すというJane’s Addictionらしさは健在だが、このアルバムの特徴はメロディ。
かつてないほどキャッチーでメロディアスな曲が多く収録されている。

またヴォーカルエフェクトなどデジタル機材を多用したのもこのアルバムの特徴。

メロディが弱いオルタナティヴな曲が苦手な人にはこれから入門するのも良いと思う。

The Great Escape Artist収録曲の試聴リンク
The Great Escape Artistのフォーマット一覧

2.コンピレーション、ベストアルバム

Live and Rare

1991年に日本のみでリリースされた企画盤。
後に海外でもリリースされたようだ。

タイトル通りミックス違いやデモ、ライヴ音源が収録されている。
初心者には不要。

Live and Rareのフォーマット一覧

Kettle Whistle

1997年の一時的な再結成の際にリリースされた。
オリジナルベーシストのエリックが参加を拒否したため、レコーディングとこの時期に行われたライヴではレッチリのフリーがベーシストとして参加した。
デイヴもこの時期はレッチリの正式なメンバーだった。

未発表曲はアルバムタイトル曲のKettle WhistleとSo Whatの2曲で残りはライブ音源とでも音源が収録されている。
Kettle Whistleは美しい曲だが、全体的には熱心なファン向け。

Kettle Whistleのフォーマット一覧

Up from the Catacombs – The Best of Jane’s Addiction

2006年にリリースされたベストアルバム。
インディ時代からStraysまでの曲が収録されている。

個人的にはこういうベストアルバムは好きじゃないのだが、手っ取り早くこのバンドを知りたい初心者にはおススメだ。

Up from the Catacombs – The Best of Jane’s Addictionのフォーマット一覧

A Cabinet of Curiosities

2009年にリリースされたボックスセット。

収録曲はデモやライヴ音源、リハーサル音源などのレアトラックばかり。
初心者が間違っても手を出すべきではない。
本当に熱心なファン向けのアイテムだ。

90年の彼らの全盛期のライヴ音源が収録されているのは嬉しい。

詳細はA Cabinet of CuriositiesのWikipediaを見ていただきたい。

A Cabinet of Curiositiesのフォーマット一覧

3.ライヴアルバム

Jane’s Addiction

1987年にTriple Xというインディレーベルからリリースされた彼らのデビュー作。
メディアによってはこのライヴアルバムを1stアルバムだとする場合もある。

へヴィだがメインストリームのへヴィメタルとは一味違うアーティスティックな音楽性はこの頃から健在で、当時のインディ界隈でこのアルバムが話題になったのも理解できる。
ペリーの中性的で妖しいヴォーカルも強烈だ。

Jane SaysとPigs in ZenはNothing’s Shockingに再レコーディングされたものが収録されている。
WhoresとChip Awayは2009年に再レコーディングされ、NINJA 2009 Tour Samplerに収録された。

Jane’s Addictionのフォーマット一覧

Live in NYC

2012年のニューヨークでのライヴが収録されたもの。

演奏もサウンドも悪くないし収録曲もベスト的なのでおススメしたい。

映像作品としてDVDとBlu-rayもリリースされている。

Jane’s Addictionのフォーマット一覧

4.Porno for Pyrosのアルバム

Porno for Pyros

1993年にリリースされた1stアルバム。

様々な音楽ジャンルを横断するという意味の「クロスオーバー」という点ではJane’s Addictionと同様だが、Porno for Pyrosの音楽性はJane’s Addictionとはやはり異なる。

Cursed Femaleのようにときおり挿入されるハーモニカがアジア的な神秘性を感じさせるし、Meijaのようにパーカッシヴな曲もあれば、Petsのようにクリーンなギターが主役な曲もあるし、Packin’のようにファンキーな曲もある。

全体的にアーティスティックな雰囲気なのはJane’s Addictionと共通しているが、ごった煮感はPorno for Pyrosの方が強い。

良いアルバムなのでJane’s Addictionが気に入ったならおススメしたい。

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Good Gods Urge

1996年の2ndアルバム。
結果的にラストアルバムとなった。

アコースティックギター、バイオリン、トランペット、クラリネット、ピアノなど様々な楽器を使用してサイケデリックで浮遊感溢れる音世界を生み出している。
Whishing Wellが特におススメの曲だ。

前半は落ち着いて聞ける曲が多く、後半は少しハードになる。
Jane’s Addictionのへヴィな部分が好きになれない人が気に入る可能性はあると思う。

デイヴ・ナヴァロ、フリー、マイク・ワットなど様々なゲストが参加している。

現在ではJane’s Addictionの影に隠れて忘れられつつあるバンドになってしまったのが残念だ。
90年代オルタナティヴを掘り下げている方は是非とも聞いてほしい。

Good Gods Urge収録曲の試聴リンク
Good Gods Urgeのフォーマット一覧

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