Helmet (ヘルメット)

Helmet

Helmet 18曲(You Tube)

Helmet (ヘルメット)の概要

90年代に、「ヘヴィ・メタルのようだが、従来のメタルとは何かが違う」というインパクトをあたえ、新たなヘヴィネスを提示した革新的なバンドのひとつ。そのようなバンドとしてSoundgardenやTool、Alice In Chainsなどがあげられるが、後に登場するバンド(特にニューメタルと呼ばれたバンド)によい意味でも悪い意味でも、最も影響をあたえたのはHelmetではないだろうか?

Helmetの音楽性は、バンドメンバーのヘンリー・ボグダンが「ソニック・ユースとメタリカの中間にあるバンド」と表現したことがあるようだが(クロスビート1992年9月号)、大雑把にいえばそのとおりだろう。メタリックなギターリフとアンダーグラウンドな雰囲気を併せ持っている。

中心人物であるギターヴォーカルのペイジ・ハミルトンは、オレゴン大学でジャズとクラシックを学び、さらにニューヨークのマンハッタン音楽学校でもジャズを専攻し、その後にSonic YouthやBig Blackなどのアンダーグランドに傾倒していったという異色の経歴の持ち主で、そのジャズをベースにした高度な音楽知識と論理的なアプローチがHelmetの個性を決定づけていたといえるだろう。具体的に説明するのは難しいが、コード進行や一風変わったギターのリフ、変拍子などで何となく感じ取れると思う。

さっき挙げたバンドたちは尊敬しているけど、正直言うとジャズに興味があった人間は一人もいなかった。みんなパンクを基盤にした音楽をやっていて、ジャズなんてダサいと思っていた。ジャズで博士号を取っている俺なんか超ダサいってわけさ。

特にニューヨークでは脱構築とかいって、訓練されていなくて騒音的、っていうのが流行っていたし。確かにそれはある程度有効だと思ったし、エキサイティングだったけど、その反面にせものアーティストをはびこらせる結果にもなった。

中略

確かに技術的に訓練され過ぎたギター奏者は、訓練され過ぎに聴こえる危険性がある。でも、訓練の足りないミュージシャンだって数年でネタ切れになるという危険性がある。自分が教育を受けたミュージシャンであることを詫びなければならないと感じたことはないよ。

ペイジ・ハミルトン / ロッキングオン1995年1月号から引用

バンドは1989年に結成され、1990年にアンフェタミン・レプタイルというインディ・レーベルから1stアルバムStrap It Onをリリースして注目を集めたが、メジャーレーベルから声がかかることはなかった。

しかし1991年の後半にNirvanaのNevermindが売れ始めると状況が一変。インディに注目が集まり、1992年の初頭にメジャーレーベルのインタースコープと契約した。アルバム3枚で120万ドルの契約金だと報じられ、メディアを賑わせた。

1992年の6月にメジャーデビューアルバムのMeantimeをリリース。後のシーンに大きな影響を与えた最高傑作であり、ゴールドディスクに認定されるなど商業的にも成功を収めた。

続いて1994年リリースされたアルバムBettyは内容的に悪くはなかったものの、Meantimeほどの評価と商業的な成功を収めることができなかった。そのことが関係したのだろうか、ブームとしてのオルタナティヴが終焉しつつあった1997年にリリースされたAftertasteではメロディアスな路線へと舵を切った。Bettyのツアー終了までバンドに在籍していたロブ・エチェベリアは次のように語ったことがある。

僕は途中まで新作の曲作りを見ていたから言えるんだけど、今回ペイジはヴォーカル・オリエンテッドで、キャッチーな方向性を強調したいみたいだ。どうなんだろう、そういうのって? 前作はセールス的に芳しくなかったから、その辺のところを打開したいみたいだ。

ロブ・エチェベリア / Aftertasteの日本盤ライナーノーツから引用

このような変化を成長や進化と感じるか、Bettyで商業的に失敗したことによる迷走と感じるかは人それぞれだろうが私は後者だ。

またペイジは、従来までは他のメンバーに遠慮していた部分もあったようだが、このアルバムからバンドメンバーに対する接し方を変化させた。しかしそのことでバンド内の緊張が高まったのは間違いないだろう。

他のメンバーにもやりたいマテリアルがあれば持ってきてもらったけど、充分な作品でなければ使わないとも言っておいた。事実、そうなった。彼らの曲の最高のものが、俺の最低のものより劣っていたら、使えるわけがないだろう?俺には絶対できないね。

実際、俺達の間には今もある種の摩擦がある。彼らは今回のアルバムに以前ほど深く関われなかったと感じている。でも俺としては「8年もやってきたんだし、原因は自分達の方にあるんじゃないか?」と言うしかなかった。

俺がこの8年間どれだけの時間を費やしてバンドのために作詞作曲をしてきたか、彼らには分かっていないんだ。このバンドを、何か実質的なものを持っているバンドにするために、いかに精力を注いできたかね。

ヘルメットの曲は、作詞作曲者である一人の人間の音楽的センスにより成り立っている。そのうえでヘルメットのサウンドは全てのメンバーの音楽的センスを合わせ持っている。その事実を受け入れたことが、自分にとって大きな啓蒙だったと思う。エゴの問題と罪悪感を克服できたことがね。

ペイジ・ハミルトン / ロッキングオン1997年4月号から引用

最終的にAftertasteは評価も売り上げも低迷し、バンドは1998年に解散してしまった。ドラマーのジョン・スタニアーはTomahawkやBattlesで活躍することとなった。

ペイジは2004年に他のオリジナルメンバーが参加しない形でHelmetを再結成し、2024年までに5枚のアルバムをリリースしているが、評価は芳しくない。

彼らのリフやサウンドが模倣され続けてきた結果、フォロワーに埋もれたオリジネーターと化してしまったような印象を受ける。

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Helmet (ヘルメット)のアルバム紹介

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