Slint (スリント)

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最終更新2021年6月15日

Slint (スリント)のアルバム紹介

Slint (スリント)の概要

Slintの知名度は高くなく、リリースした曲は17曲だけなのだが、いわゆるポスト・ロックと呼ばれる音楽の原型となったロック史上に輝く重要バンドといえる。
Slintが存在していなかったらMogwai、Godspeed You! Black Emperor、Sigur Rosといったバンドは存在していなかったかもしれない

ノイジーなギターと変拍子、強弱の激しい複雑な曲構成、ヴォーカルは入っているが呟き声のようなもので主役は楽器隊といったところが音楽的特徴だろうか。
ジャズやファンクの影響を指摘されることもある。
それらから生み出される猟奇的、狂気的な音楽には圧倒されるだろう。

Slint 17曲(You Tube)

Slint結成以前、ギターのブライアン・マクマハンとドラムのブリット・ウォールフォードはSquirrel Baitというハードコア・パンク・バンドで活動していたこともある。
Squirrel Baitには後にBastroなどで活躍するデヴィッド・クラブスも在籍していた。

Slintそのものは1986年にケンタッキー州ルイビルで結成された。
1987年にはスティーブ・アルビニの下で1stアルバムTweezのレコーディングを行い、1989年に自主レーベルからリリースされた。
Tweezはインディ・レーベルのTouch And Goから注目され、Tweezはタッチ・アンド・ゴーから再発、次のアルバムもTouch And Goからリリースされることになった。

1990年に2ndアルバムSpiderlandの制作に取り掛かり、スティーヴ・アルビニではなくブライアン・ポールソンの起用を決断した。
レコーディング開始前にマクマハンが交通事故で命を落としかけたことが暗い影を落とし、インディで有名なTouch And Goと契約したことでプレッシャーにも苦しめられた。

そのような緊張感の中でマクハマン自身の不安や心の闇を歌詞にして(主に成人になることへの不安らしい)レコーディングしていたが、19歳の彼はGood Morning Captainという曲のレコーディングでI’m sorry and I miss youと叫んでレコーディングを終えた直後に精神的に崩壊してしまい、翌日に病院でうつ病と診断されそのままバンドを脱退。
Slintは2ndアルバムSpiderlandをリリースする前に終焉を迎えることになってしまった。

SlintのSpiderlandというアルバムは素晴らしいレコードだ。
まだロック・ミュージックに感動できる人は聞き逃してはならない。
10年後には新たな時代を切り開いた画期的なレコードとされているだろう。(スティーヴ・アルビニ / 1991年3月 Melody Maker誌 Spiderland by Slint: the album that reinvented rockから引用)

また、日本のライターの大鷹俊一さんはアルバムレビューで次のように書いた。

ピクシーズをもっともっとアコースティック風にして、シド・パレットの出口ナシの世界をさまよっているといった所だと言えばどうかな。
いずれにしてもここ最近では珍しいほど純正の神経症のアーティストがここにはいる。
久々のパラレル・ワールドの超大物。
20年後には大変なコレクターズ・アイテムになっていること間違いなしの一枚だ。(クロスビート1991年6月号)

かくして2人のレビューは現実のものとなったわけだが、当時は上記のような高評価もあったものの、バンドが解散したためツアーは中止となり、プロモーションもままならず、当初の売り上げは数千枚と推測され、歴史に埋もれた名盤となってしまった。

しかしMogwaiなどのSlintの影響下にあるポスト・ロックと呼ばれたバンドが台頭するにつれ、メディアで取り上げられることが多くなり、知名度と評価を上げていき、ポスト・ロックと呼ばれる音楽の原型といわれるほどになった。
私もそれでこのバンドを知ることができた一人だ。
このような特殊な経緯をたどったバンドとアルバムは他に存在するのだろうか?

解散後メンバーはSlint以外のバンドで活動し、もっとも有名なのはTortoiseやビリー・コーガンのZwanなどで活躍したデヴィッド・パホだ。

解散から15年が経った2005年、Mogwaiがキューレーターを務めたAll Tomorrow’s Partiesというフェスで再結成を果たした。
その後は単発的に再結成ライヴを繰り返し、2014年にはSpiderlandのボックスセットがリリースされた。
それ以降は活動していない。

関連リンク


Slint (スリント)のアルバム紹介

1.スタジオアルバム

Tweez

スティーヴ・アルビニの下でレコーディングされた1989年作。

マスロックという言葉を連想させる一風変わったリズムや起伏に富んだダイナミックな展開は既に存在。
80年代のハードコアに感化され、その攻撃性を維持しつつもハードコアのルールに縛られることなく様々な音楽を取り入れ、新たな音楽を創造していくポストハードコアという言葉が似合う。

殺伐としたギターが印象的なRonとCarolとCharlotte、逆にクリーントーンのギターが素晴らしく、後に登場するTortoiseを思い浮かべてしまうNan DingとDarleneがおススメの曲だ。

ただ、ギターサウンドが良くも悪くもスティーヴ・アルビニのものであるため、彼のバンドのフォロワーのような印象を受けてしまうかもしれない。

ベースのイーサン・バックラーはレコーディング終了後に脱退し、トッド・ブラッシャーが新たに加入した。

Tweezの試聴リンク

Spiderland

NirvanaのNevermindと同じ1991年にリリースされた、後にポストロックと呼ばれるバンドたちの道標となったロックの歴史を変えたアルバム。
勘違いされやすいが、このアルバムはスティーブ・アルビニの下でレコーディングされてはいない。

静と動を巧みに使い分け、ボソボソと呟くようなヴォーカルスタイルを採用し、単純なリフを繰り返すことで緊張感を高めると同時に不気味な雰囲気を増幅させた結果、猟奇的で恐怖すら感じるサウンドとなった。
最後のGood Morning, Captainは最高の曲だと思う。

前述したようにリリース前にバンドは解散しており、そのためプロモーション活動がロクにできず、長らく知る人ぞ知る名盤として埋もれることになってしまった。

Spiderlandの試聴リンク
Spiderlandのフォーマット一覧

2.EP

Slint(タイトルなし)

1994年にリリースされた唯一の2曲入りEP。
レコーディング時期はTweez後の1989年。

Glennという曲では、後のアルバムSpiderlandで彼らの代名詞ともなるスローテンポで単純なリフを繰り返して緊張感を高めていくという手法を聞くことができる。
後につながる重要な曲だ。

もう1曲はTweezにも収録されていたRhodaの別バージョン。

Slint(タイトルなし)の試聴リンク

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