1993年のメジャーデビューアルバム。彼女の最高傑作であり、後続へ大きな影響を与えた1990年代を代表する一枚だと称賛されることも多い。
前作同様にUSアンダーグラウンドに影響されたかのようなギターがメインではあるが、彼女のルーツの一つでもあるブルースの要素が前面に押し出され、単純な勢いまかせではなく強弱をつけたり、ソウルフルに歌い上げてオーディエンスの心を掴んでいくものとなった。ハードな曲ではトリオ・バンドの一体感が見事で、特にボブ・ディランのHighway 61 Revisitedをハードにアレンジしたカバーは聞きどころ。
傑作とされる理由に歌詞のすばらしさがあり、愛する男の脚を切って殺してしまうという情念的なものや、トランスジェンダーの要素、「濡れない自分の性器」について歌うなど性的に過激なものが目立つ。
単なる好色魔、下ネタ扱いされないのは、そこに女性が共感できる部分、反男根主義、男性優位社会批判、男性による暴力批判などのフェミニズムの要素を感じられるからだろう。ポーリー自身はフェミニストを自称することを拒んでいるが、歌詞の内容からしてそう呼ばれるのは仕方がないと思う。
歌詞の和訳はブログ日記で記事にしたので参考にしていただきたい。
サウンド面で特筆すべきは「スタジオでのプロセスを経た音とは思えない、まるでライヴ演奏を目の前で見ているかのような音」を求めてスティーヴ・アルビニのもとで製作されたことだ。
彼女の要望どおり「生々しい音」に仕上がり、緊張感を高める結果となったと思うが、ヴォーカルを埋もれさせてしまったアルビニのミックスには賛否両論がある。
個人的にも彼女の1stはデビュー時のパティ・スミスにも劣らないインパクトがあったと思ってるくらいだし、同じ90年代を生きる女性の一人としてこれからの活躍が最も楽しみなアーティストね。でも2ndにおけるスティーヴ・アルビニのプロデュース法だけは何度聴いても納得できないものがあったけど。
スージー・スー ロッキングオン1995年2月号
個人的には特に爆音で聞くとすばらしいサウンドだと思うが、音量が小さいこともあり、現代的な音圧に慣れきってしまっている場合は見向きもされない可能性があるので初心者には推奨していない。
アルビニのサウンドが好きになれないのなら、このアルバムのデモ音源集である4-Track Demosを推奨したい。ただし収録曲は一部異なる。






