Pavement (ペイヴメント)

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Pavement (ペイヴメント)のアルバム紹介

Pavement (ペイヴメント)の概要

ローファイと呼ばれる代表的なバンドの一つ。
89年にカリフォルニアのストックトンでギターヴォーカルのスティーヴ・マルクマスを中心に結成され、92年に発表された1stアルバムSlanted and Enchantedが英米のメディアから大絶賛を受けた。

80年代アンダーグラウンドのノイズの影響を受けつつ、ローファイと呼ばれるだけあってポップなギターロックを素朴で脱力的でやる気のない歌声と演奏が特徴だ。

Pavement 22曲(You Tube)

僕は自分の歌が下手だと思ってた。
っていうか、よくあるこどだろうけど、ヴォーカルとして歌ってみるのが怖かったのかな。

でもこれ幸いというか、80年代後半のインディ・ロック・シーンには、ビート・ハプニングとかパステルズがいたじゃない?
音程の不安定なバンドがさ(笑)。
「これなら僕にもできる、大したことじゃない」って安心したんだ。
(スティーヴ・マルクマス / クロスビート1997年8月号)

また、醒めた目で世の中を見ているかのような皮肉めいた歌詞もPavementの個性だ。
2ndアルバムCrooked Rain, Crooked Rainに収録されているCut Your Hairではバンドの外見ばかり気にする音楽業界を批判。
Range Lifeでは、売れっ子オルタナバンドであったSmashing PumpkinsとStone Temple Pilotsをインディ側の視点から名指しで非難。

Fillmore Jiveでは「オヤスミロックンロールの時代よ もうロックは必要ないんだから」と歌い、ロックで熱狂することを否定した。

(フォルモア・ジャイヴの泣きのギターソロは)最近のアメリカン・ギター・バンドのほとんどが持つ一種陳腐なセンチメンタリティを僕なりに揶揄したものでね。
まだまだ自分たちの音楽やライヴが聞き手を団結させる、みたいな妄想があるわけで、個人的にそういう聞き手側の個性も心理状態も無視した無神経なセンチメンタリティってのにはものすごく不快感を覚えちゃってね。

聞き手を操作したいとは思わなくても、聞き手がバンド側から乱暴なくくり方をされてるって点にはすごく同情を感じてたわけだから。
だってこれだけオーディエンスの知識や体験が積み重ねられてきた現在、未だに60年代70年代の「興奮」と同じ常套手段が通じると思い込んでるなんてバンド側の傲慢もいいとこだよ。
(スティーヴ・マルクマス / ロッキングオン1994年5月号)

Crooked Rain, Crooked Rainの日本盤ライナーノーツによると、初期のPavementの来日公演は本当にいい加減なステージだったらしい。
観客無視、「ライヴはリハーサル」といった世の中を馬鹿にしたような態度は、当時は衝撃的だったようだ。

そのような音楽性や歌詞、態度からは、「ヤケクソになった負け犬」とか「世の中をおちょくっている」とか、Nirvanaなどとは違った方法で絶望のようなものを感じさせる。

後期になるとギターによるノイズが減ってメロディが際立っていき、メロウ(円熟)という言葉を連想させるような音楽性に変化し、サウンドも極端なほどローファイではなくなった。
また、歌詞の内容も変わっていった。

クルーキッドレインでは音楽に対して皮肉っぽいことを言ってたりもしたけど、今はそんなものにあまり興味がなくなったよ。
心から直接問いかけるような曲を書きたいと思う。
それも歳をとって自分に自信を持てるようになったから変化が出てきたんだろうね。
(スティーヴ・マルクマス / クロスビート1997年8月号)

Pavementは10年間でアルバム5枚をリリースし、1999年に解散。
理由は創造性の面でバンドに限界を感じていたようで、なおかつメンバーの自宅がアメリカ全土に散らばっており気軽に集まれる状況ではなかったため、それを乗り越えられなかったとのこと。

解散後、スティーヴ・マルクマスはソロ名義で活動するようになった。

2000年代に入るとPavementの影響下にあるような、いわゆるローファイなインディポップを演奏するバンドが大量発生し始め、Pavementが再評価されるようになった。

そして2010年にPavementは再結成を果たし、世界各国をツアーして回った。
2020年には結成30周年記念ツアーが予定されていたが新型コロナの影響で延期になった。

関連リンク


Pavement (ペイヴメント)のアルバム紹介

1.スタジオアルバム

Slanted & Enchanted

1992年にリリースされた1stアルバム。
これがメディアに大絶賛されたことでPavementの知名度が高まった。

初期だけあってサウンドは素朴でスカスカ。
80年代インディからの影響を感じさせるノイズが多いのだが、ローファイ過ぎてノイジーに聞こえない。

そんなサウンドにポップでメロディアスな歌が乗っているのが特徴で、そのメロディセンスには目を見張るものがある。
1曲目のSummer Babeのようにノイズの入った曲だけではなく、Hereのように静かな曲も魅力的だ。

このアルバムのドラムは、当時40代のおじさんだったギャリー・ヤングが担当していたが後に脱退している。
脱退理由として、ギャリーは日本のメディアにスティーヴンがレーベルとの契約金を独り占めしたからだとぶちまけたこともあった。

Slanted & Enchantedのフォーマット

Slanted & Enchanted Luxe & Reduxe(デラックスエディション輸入盤)
Slanted & Enchantedのデラックス・エディション(2002年の日本盤)

Slanted and Enchantedの日本盤(2010年 Blu-spec CD)
Slanted and Enchantedの日本盤(2002年)
Slanted and Enchantedの日本盤(1996年)


Crooked Rain, Crooked Rain

94年にリリースされた2ndアルバム。
多くの人がこのアルバムを最高傑作に挙げるだろう。

ドラマーが交代し、アルバム制作費も増えたためだと思うが、Slanted & Enchantedと比べてサウンドの質は格段に向上しており、音楽性の幅も広がった。
だが、ヘロヘロなヴォーカルと脱力的な曲は健在で、そのバランスが絶妙だ。

ローファイサウンドとポップなギターロック、上で述べたような皮肉な歌詞がこのアルバムの特徴。

Cut Your Hair、Gold Soundz、Range Life、Unfair、Elevate Me Later、Silence Kitなど、Pavementの曲の中でも人気が高いものが数多く収録されているので、初心者はこのアルバムから聞くのがベスト。

Crooked Rain, Crooked Rainのフォーマット

Crooked Rain, Crooked Rain: L.A.’s Desert Origins(デラックスエディション輸入盤)
Crooked Rain, Crooked Rainのデラックス・エディション(2004年の日本盤)

Crooked Rain Crooked Rainの日本盤(2010年 Blu-spec CD)
Crooked Rain Crooked Rainの日本盤(2002年)
Crooked Rain Crooked Rainの日本盤(1994年)


Wowee Zowee

95年の3rdアルバム。
Crooked Rain, Crooked Rainで聞かれたようなポップな感じは後退し、憂鬱で混沌とした曲が印象に残るような仕上がりとなった。

このアルバムのハイライトは、Sonic Youthからの影響を感じさせるFight This Generationという曲のカオスだろう。
他にもBrinx Job、Best Friend’s Arm、AT & Tといった負け犬っぽさ全開の曲も聞きどころ。
Groundedは人気の高い曲。

ただ、2000年代のインディポップ界隈から影響源としてPavementというバンド名を知り、それをきっかけに聞いてみようと思っているような初心者にはヘヴィすぎて不向き。
後回しにしても良いと思う。

Wowee Zoweeのフォーマット

Wowee Zowee: Sordid Sentinels Edition(デラックスエディション輸入盤)
Wowee Zoweeのデラックスエディション(日本盤)

Wowee Zoweeの日本盤(2010年 Blu-spec CD)
Wowee Zoweeの日本盤(1999年)
Wowee Zoweeの日本盤(1995年)


Brighten The Corners

97年作。
過渡期といった声も聞かれるが個人的にはこれが一番好きだ。

相変わらず歌は下手だが、初期に感じられた衝動や負け犬っぽさは感じられない。
その代わりPavementのメロディセンスが際立っており、極上のポップアルバムに仕上がっている。

このアルバムを一言で表すならばメロウ(円熟)。
それなりに大人になったPavementを感じることができる。

Stereo、Shady Lane / J vs. S、Date w/ IKEA、Type Slowly、Embassy Rowなどがオススメの曲。

Brighten The Cornersのフォーマット

Brighten the Corners: Nicene Creedence Edition(デラックスエディション輸入盤)

Brighten the Cornersの日本盤(2010年 Blu-spec CD)
Brighten the Cornersの日本盤(1997年)


Terror Twilight

99年にリリースされた結果的に最終作となったアルバム。

従来のアルバムではセルフプロデュースだったが、RadioheadやBeckを手がけていたナイジェル・ゴッドリッチをプロデューサーに迎えて制作された。
そのため、Pavementにしては曲の構成が複雑化した印象を受ける。

それが功を奏し、バンドとしてマンネリ化せずに前進することができた傑作アルバムだと思う。
2000年代インディポップからPavementに行き着いた方はこのアルバムが最高傑作だと思うかもしれない。

しかしスティーブ自身はPavement解散後のインタビューで、全米中に散らばっているメンバーを集合させ、短期間で制作するのは辛かったかのような発言を残しており、本人はあまり気に入っていないようだ。

解散後、スティーブ・マルクマスはソロ活動を始めたが、ここでは省略。
ソロ活動についてはWikipediaのStephen Malkmusを参考にして下さい。

Terror Twilightの日本盤(1999年)


2.ベストアルバム、コンピレーション

Quarantine the Past: The Best of Pavement(ザ・ベスト・オブ・ペイヴメント)

2010年にリリースされたベストアルバム。

個人的にはこういうベストアルバムは好きではないが、入門用としては便利だろう。
スタジオアルバムに収録されなかった曲もいくつか入っている。

収録曲はWikipediaのQuarantine the Past: The Best of Pavementで確認して欲しい。

Quarantine the Past: The Best of Pavement(ザ・ベスト・オブ・ペイヴメント)の日本盤(2010年)


Gold Soundz: The In (Compleat) Pavement

2010年に日本だけの限定盤としてリリースされたボックスセット。

Blu-spec CD紙ジャケ仕様のスタジオアルバム5枚、プロモーションビデオが収録されたDVD1枚、ライヴDVD1枚の計7枚組。

一気に全部揃えたい方にはオススメ。
ただ限定盤なので新品での入手は難しいかもしれない。


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