Ian MacKaye (イアン・マッケイ) Fugazi (フガジ) Minor Threat (マイナー・スレット)
Ian MacKaye (イアン・マッケイ) Fugazi (フガジ) Minor Threat (マイナー・スレット)のアルバム紹介
Ian MacKaye (イアン・マッケイ) Fugazi (フガジ) Minor Threat (マイナー・スレット)の概要
FugaziとMinor Threat 31曲(You Tube)
イアン・マッケイは、80年代にハードコア・シーンで活躍し、その後もメジャーやメインストリームと関わりを持たずインディペンデント精神、DIY精神を貫く活動内容から、USインディの最重要人物の一人と言われる。
活動拠点はアメリカの首都であるワシントンD.C。
Bad Brainなどに刺激されたイアンは80年にMinor Threatを結成する。
音楽性は高速テンポで畳み掛けるハードコアで、80年代のUSハードコアを代表するバンドの一つ。
そしてもっとも革新的だったのが、ドラッグはもちろん、タバコは吸わない、酒は飲まない、愛のないセックスはしない、という禁欲的な歌詞と姿勢だ。
セックス・ドラッグ・アルコールという当時のメンストリームだったLAメタルとは対照的だった。
このような姿勢はStraight Edge(ストレート・エッジ)と呼ばれた。
名前の由来は「俺はドラッグをやらない」と歌ったStraight Edgeという曲名に由来している。
ヤクの歌には事欠かなかった。
ジャンルに関係なくだ。
誰もが「ハイになれハイになれ。」
クラプトンがコカイン、ルー・リードはヘロインを歌い、みんなが「ブッとんで楽しもう。」
誰かが「そうじゃない」と言わなきゃ。
(イアン・マッケイ アメリカン・ハードコア から引用)
また、Minor Threatには後にBad Religionに加入することになったブライアン・ベーカーが在籍していたことでも知られる。
83年に解散した後はEmbraceというバンドを経て、87年にFugaziを結成。
パンク精神を維持しつつも、典型的なハードコアサウンドから脱却し、独自のサウンドを追及したバンドと評され、そのサウンドは聞き手の感情を揺さぶるようなものだ。
ハードコアで表現していたパンク魂を他の方法で表現しようとしていたのだろうか?
当時はそのような音楽性からエモコアと呼ばれていたようで、最近流行のエモの先駆者とされることもある(本人は当時からエモと呼ばれることを嫌っている)。
Fugaziは2003年に活動休止し、その後はイアンは現在Evensでアコースティックなサウンドを追求した。
アルコールビジネスとは無縁な会場を選んでライヴを敢行しているのがイアンらしい。
また、イアン・マッケイは自身のレーベルDischordを運営。
オルタナグランジ期には、メジャーレーベルから様々な話を持ちかけられたようだが、メジャーと結びつくとバンドに関する事項を100%コントロールすることは不可能との理由から断った。
詳しくは売れる音楽を作らせろを参考にして欲しい。
ディスコードも大手レーベルからパートナー契約や買収話を持ちかけられたよ。
でも、どれも絶対にありえない話だった。
絶対にね。
90年代初めにニルヴァーナが出てきて、グランジ/パンク/オルタナってまあ呼び名は何でもいいんだけど、子供騙しのポップミュージックが大流行したとき、大手レーベルはあの音楽を自分達の手中に収めてネーミングを考えて売りつけたんだ。ものすごい混乱をもたらしたし、お互いに交わす話の内容が音楽のアイデアから契約とカネに変わった。
ただ、インディ・シーンって・・・というか、そもそもインディシーン自体、俺は定義付けのできないものだと思う。
でもアンダー・グラウンド・シーンは決してなくなることはないんだ。
(イアン・マッケイ ロッキング・オン 2007年10月号から引用)
イアン・マッケイの支持者の中には、90年代オルタナティヴとしてイアンを語ることに違和感があるかもしれない。
しかし、イアンはスティーヴ・アルビニ以上にインディ至上主義者。
アンチ商業主義、世の中のトレンドに流されず強い意志を貫き、アンダーグラウンドに身を置き続けるイアンは真のオルタナティヴと言えるだろう。
関連リンク
Ian MacKaye (イアン・マッケイ) Fugazi (フガジ) Minor Threat (マイナー・スレット)のアルバム紹介
1.Minor Threat
Complete Discography
Minor Threatの全音源を集めたもの。
単純でストレートな高速ハードコアで、ドラッグ、アルコールといった退廃的なロック像から決別した歌詞も重要だ。
USハードコアを語る上で絶対に紹介されるバンドなので、ハードコア入門としても最適だと思う。
Complete Discographyの日本盤(2010年)
2.Fugazi
13 Songs
88年の7曲入り”Fugazi”と、89年の6曲入り”Margin Walker”を一枚にまとめたもの。
Embraceの作品は聞いたことがないから分からないが、Fugaziは初期の頃からハードコア・サウンドからは脱却している。
曲の構成やリフはMinor Threatと比べると練られている。
しかしハードな雰囲気は健在で、内側から爆発するような情熱を感じ取ることができるはず。
それはイアン・マッケイのリード・ヴォーカル以上にギー・ピッチョットの熱唱によるところが大きいと思う。
現在販売されているのは2003年にリマスターされたもの。
Repeater + 3 Songs
90年の1stフルアルバム。
個人的にはこれがFugaziのベスト。
基本路線は13 Songsと変わらずハードなサウンドで、内側から沸き起こるマグマのような激情を感じさせる。
この辺りの要素がエモコアと呼ばれた理由なのだろうか?
Fugaziの作品全般に言えることだが、決してポップではないし、ましてやポップパンクやメロコアとは全く違い、数回聞いただけでは魅力が理解できないだろう。
だが、「鉄のような意志」を感じさせるサウンドは見事としか言いようがない。
それは1曲目のTurnoverから感じ取れるはず。
ぬるま湯パンクにはできない芸当だ。
現在販売されているのは2004年にリマスターされたもの。
Steady Diet of Nothing
91年の2ndアルバム。
このアルバムも基本路線は変わらない。
だが、初のインストナンバーを収録するなど上の2枚と比べてアイデアは広がっているように思える。
その代わり感情の爆発という点では少し後退した感があるし、音楽的工夫も続くアルバムと比べて中途半端な印象を受ける。
Steady DietやLong Divisionのように面白い曲もあり、決して悪いアルバムではないが、後回しにしても良いと思う。
現在販売されているのは2004年にリマスターされたもの。
Steady Diet of Nothingの日本盤(2011年)
In on the Kill Taker
93年リリースの3rd。
前作は過渡期的だったが、このアルバムは新境地を開拓した傑作だ。
ミドルテンポの曲や強弱をつけた曲など、Fugaziの新たな音楽性が印象的。
リラックスして聞くことができるインスト”Sweet And Low”も見事。
曲のテンポが落ちたとはいえ、感情を内側から揺さぶられる感覚は健在だし、Facet Squaredのようなハードな曲もパワフル。
全く隙のないアルバムだ。
現在販売されているのは2004年にリマスターされたもの。
In on the Kill Takerの日本盤(2011年)
Red Medicine
95年に発表された4thアルバム。
これも傑作。
かなりアイデアを練って製作された感があり、代わりにハードなサウンドで感情を揺さぶる従来のスタイルは少なくなっている。
良く言われるのはヒップホップとダブの要素、メロディアスなヴォーカルなど。
Sonic Youthのようなカオスが渦巻くBy You、不気味なシンセサイザーが怖いVersion、ディストーションをかけていないポップなギターリフが印象的なDo You Like MeとTarget、お茶を飲みながらのんびり聞けそうなFell Destoryなど、非常にヴァラエティ豊かなアルバムだ。
逆にFugaziにしてはストレートなパンクソングのBack To BaseやDown Cityのような曲もあるし、難しいことをしているわりには全体的にキャッチーで聞きやすい。
End Hits
98年作。
Fugaziの作品の中では最も聞きやすいということで、様々なところで入門用として薦められている。
最高傑作に挙げられることも多いようだ。
音楽性は前作Red Medicineの延長線上で、特に練りに練られたハードな曲が見事。
メロウになったが以前の激情は全く失われていない。
1曲目の奇妙なリフで始まるBreakは最も人気のある曲の一つだし、爽快感溢れるインスト曲Arpeggiatonも素晴らしい。
同じサウンドのアルバムを何枚も作り続ける商業的なパンクバンドとは格が違うと感じさせる。
一方では「考えすぎていてスタイルは変われどキープしてきたハードコアの心性が減っている。」とする否定的な意見もある。
確かにClosed CaptionedやFloating Boyを聞いているとそういう意見に同意してしまう。
Pink Frostyは緊張感があって良いと思うが・・・
個人的にはRed Medicineの方が好きだが、聞いて損はない良いアルバムだと思う。
Instrument
99年リリース。
Instrumentという映像作品のサウンドトラック。
タイトルからインスト曲集を連想してしまうかもしれないが、歌が入った曲もある。
メンバー全員が参加していない曲や、Pink FlostyやArpeggiatorのように以前のアルバムに入っていた曲のデモ・ヴァージョンが収録されている。
デモといっても全く違うアレンジが楽しめるし、イアンがピアノをバックに歌うI’m So Tiredなど聞き所は多いアルバムだ。
サウンドトラックということもあってハードな部分は少ないが、これはこれで素晴らしいアルバムだと思う。
The Argument
2001年リリース。
はじめて聞いたとき、2曲目のCashoutが従来のFugaziとは違って内向的なのに驚いてしまったが、アルバム全体のトーンはこの曲のように暗い。
ダークな緊張感が特徴で、特に初期のFugaziとは一味違った激情ロックを楽しむことができるアルバムだ。
このアルバムも奥が深い割にはメロディも良いし、何より傑作なので入門用にも適していると思う。
Fugaziはこのアルバムを最後に活動を停止。
2009年3月現在も活動を再開していない。
3.The Evens
The Evens
Fugazi活動停止後、イアン・マッケイは元The Warmersのエイミー・ファリナとThe Evensを結成し、2005年にこのアルバムをリリースした。
楽器はイアンのギターとエイミーのドラムだけという非常にシンプルな構成で、ヴォーカルは両者が担当している。
サウンドは素朴でローファイ感が溢れるようなものだ。
正直言ってFugazi程のインパクトはないが、悪いアルバムではないのでイアン・マッケイに心底惚れた人は聞いてみるべきだ。
日本盤は無い。
Get Evens
2006年リリースのThe Evensの2ndアルバム。
1stアルバムと比べると、ローファイな雰囲気は後退し、ギターを力強くジャカジャカと鳴らしているのが印象的。
ドラムとギターというシンプルなスタイルは相変わらずだが、2人のコンビネーションに磨きがかかり、聞き手の心を捉える力は格段に向上している。
成長の跡を確実に感じさせてくれるのがイアン・マッケイらしい。
個人的には1stよりもこちらの方が好きだ。
日本盤は無い。