海外バンドの日本盤レコードの音は悪いといわれる理由

コンニチハ、PILのジョン・ライドンです。

今度のアルバム(Metal Box)で自慢できるのはサウンドプロダクションが非常に素晴らしいってことだ。
カッティングまで自分で点検した。(Metal Boxの日本盤のライナーノーツ)

今日はレコードの話題です。
これから書くことはCDには当てはまりません。

海外バンドの日本盤レコードは音が悪いといわれる理由です。
ジョン・ライドンのいう「カッティング」という言葉も関わってきます。


まず最初に書いておきますが、このブログでは輸入盤にライナーや対訳を付けただけの国内仕様盤のことも日本盤と書いてきた記憶がありますが、この記事での「日本盤」は厳密な日本盤を意味します。
つまり、日本で生産されたレコード、メイド・イン・ジャパンです。

また、海外バンドの日本盤レコードの話であって、日本のバンドの日本盤レコードの話ではないです。
日本のバンドの場合は、日本盤の音質が最高です。

まあ最近の海外バンドのアルバムで、日本盤がリリースされることなんてないですけどねえ。
ですから主に昔のアルバム、80年代以前の作品に関わってくる話です。

海外バンドの日本盤レコードの音が悪いといわれる理由は主に2つです。
まずはマスターテープの問題です。

Beatlesがレコーディングとミキシングを終え、マスターテープを制作したとします。
そこから今度はレコードを生産するわけですが、そのためにはマスターテープからラッカー盤というのを作らなくてはなりません。

ラッカー盤というのは、まあレコードの溝の型になるものだと理解するのが簡単ですかねえ。

Beatlesの場合イギリスのバンドですから、自国のレコード、つまりUK盤は手元のマスターテープを使えばよいわけです。
ですが、マスターテープは世界に一つしかありません。
他の国でレコードを生産する場合はどうするのでしょうか?

そういう場合はマスターテープのコピーを使用します。
Beatlesの場合ですと、Beatlesのレコードを日本で生産する場合は、イギリス本国のレコード会社から日本のレコード会社にマスターテープのコピーが送られてきます。

ですがコピーといっても、カセットテープ同士やビデオテープ同士のダビングを知らない世代の方は理解できないかもしれませんが、マスターテープはデジタルデータではないんで、コピーすると劣化します。

しかも、一世代目のコピーならまだいい方ですが、コピーのコピーかもしれませんし、コピーのコピーのコピーかもしれません。
コピーを重ねるごとに音は劣化していきます。

日本に送られてきたマスターテープのコピーは、ケースバイケースだと思いますが、基本的に何代目のコピーなのか良くわからないようです。

つまり、Beatlesの日本盤のレコードを作る際に使用されたマスターテープは、Beatlesの本国のUK盤を作る際に使用されたマスターテープと比べると、音質的に劣るわけです。

これが日本盤のレコードの音が悪いといわれる理由の一つです。

もう一つの理由はカッティングです。
先ほどラッカー盤という言葉を出しましたが、カッティングとはラッカー盤を制作する作業のことです。
そのときに、CDでいうところのマスタリング、音の最終調整が施されます。
ですから、カッティング=マスタリングと解釈している人も多いです。

冒頭のジョン・ライドンですが、「カッティングまで自分で点検した。」と言っています。
まあ音に関わることですから、カッティングにはミュージシャン本人が立ち会うのが普通でしょう。
ジョンの場合は音質にこだわる人間ですから、現場でかなり細かくカッティング技師に指示していたのかもしれません。

ですが、これはジョン・ライドンの本国UK盤での話です。
日本盤の場合はどうでしょうか?

当然のことながら、日本盤のカッティングは日本で行われますが、ミュージシャン本人はカッティングに立ち会うためにわざわざ日本に来ません。
カッティング技師もUK盤とは違う方が担当することになります。

つまり、UK盤と日本盤ではマスタリングが違います。
そして日本盤はミュージシャン本人が確認してOKを出した音ではないです。

そういうわけで、海外バンドの日本盤レコードの音は悪いと考えられていて敬遠されています。
気づいた方も多いと思いますけどこの理論で行くと、Beatlesの場合でしたら日本盤はおろかUS盤もダメということになります。
つまり、そのバンドの本国盤以外はアウトです。

更にいうと、カッティングにミュージシャン本人が立ち会うのは最初のラッカー盤だけです。
それが寿命を迎え、新たにラッカー盤を制作する際は立ち会いません。
またカッティング技師も別人の可能性がありますし、マスターテープの経年劣化ということも考えられます。

ですから音質を突き詰めていくと、Beatlesの場合だったらUK盤の中でも一番最初のラッカー盤、マトリクス1の真のオリジナル盤が最高だということになります。
ですから、Beatlesに限らずバンドの本国のオリジナル盤は中古で高値がついています。

ですが今まで書いてきたことはあくまで一般論であって、作品によってそれぞれ事情が異なる可能性があります。
例えばカッティングに立ち会わない人もいたでしょうし。
また、音質なんて聞く人の好みの問題でもあるわけで、一概に海外バンドの日本盤はダメだとは言えません。

まあこういう理屈があるから中古レコード屋で日本盤を購入するのを躊躇してしまいますけどね。

次回は日本盤の音質を検証してみます。

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