MTVの開局とロックの死

MTVの開局とロックの死

70年代後半から兆候はあったらしいが、80年代はロックが「死んだ・商業化した」時代だといわれる。ロックは不良・落ちこぼれ・はみ出し者たちが、大人が作り上げた社会に対する反逆的な怒りのエネルギーだった。

それが80年代には、いわゆる一般人もお茶の間で楽しめる国民的娯楽に成り下がってしまった。その原因は81年に開局したMTVだろう。

MTV(Music Television)はアメリカの音楽専門チャンネルで、曲のプロモーションビデオを大量に放送することで大きな影響力を持つようになった。

従来のラジオで多く流された曲がヒットするという方程式は崩れ、MTVでプロモーション・ビデオを放送された曲が売れるという図式に変わって行った。

テレビが主流になるということは、アーティストにとっては音楽だけでなく外見も重要になってくる。さらには音楽がよくなくても大衆受けするルックスや派手なパフォーマンスさえあればスターになるのも夢じゃなくなった。

MTVのよいところをあげれば、アーティストが音楽と映像を絡めた表現を製作することが可能になったことだろうが、残念ながらビデオの多くは大衆ウケを狙ったものが多く、また反社会性などビデオの内容に問題があると判断されると放送されなくなるといった検閲問題も生じた。

そういったMTVの特徴に合致してスターとなり、その頂点に君臨したのがセクシー路線のMadonna、映画並みの制作費を注ぎ込まれた大ヒット曲”Thriller”のビデオでゾンビを演じたMichael Jacksonだったのだ。

82年~84年のビルボード年間トップ10中、9割近くがMTV関連のアーティストで占められるに至ったといわれるが、もちろんそれらに対する批判もあった。

80年代にUSアンダーグラウンドで活躍したDead Kennedysは1985年にリリースしたFrankenchristというアルバムにMTVを批判する曲を収録した。

おまえは反逆のロックン・ロールを

穏やかなるパット・ブーン(ポップ・シンガー名)に仕立てた

想像力など何も残っていない証拠

MTVは放送中

MTVは放送中

Dead Kennedys / MTV-Get Off The Airの歌詞対訳から引用

※映像はオフィシャルのものではなく有志が制作したものかもしれません。

MTVがロックを骨抜きにして、リスナーの想像力を破壊しているという批判だ。またニール・ヤングも同じようなことを語ったことがある。

ああ、MTVとロック・ヴィデオのおかげでいわゆるコンテクストは変わっちまったね。その通りさ。MTVは音楽を視覚化することで、自動的にそれまで音楽が持っていた最も自然な神秘性や”深み”ってものを剥ぎ取ってしまったからな。

ロック・ヴィデオってものが出てくる前は、音楽を聴く時には、みんなそれぞれイマジネーションを働かせて、自分が持っている能力に応じて音楽と直面しなきゃならなかったんだけどね。

ニール・ヤング クロスビート1990年12月号

MTVについてはThe History of Rock ‘n’ Rollという1995年のドキュメンタリーの、Vol.5の「MTVが生んだスター達(原題はUp from the Underground)」が多少参考になるので興味のある方は鑑賞していただきたい。

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