大胆な変貌を遂げた2008年作。このアルバムで彼女が取り組んだのは、2005年までロクに弾いたことがなかったピアノで作曲し、ピアノをメインの楽器として使用することであった。
私は今回、新しい場所、新しいグラウンドを探してたのよ。だからいろいろ実験してて。で、この作品において新しいグラウンドを見つける一番の方法は、ギターから離れることだって思った。私が慣れ親しんだ楽器からね。
でも、かなりすぐに、どう弾けばいいのかもわからないような楽器でやるのが、すごくエキサイティングだってことに気付いたの。ピアノのちゃんとした弾き方も知らなかったし、自分がどうやってるかもわからないまま、闇雲に弾いてたんだけど……かなりすぐに、私が曲を書く新しい方法を見い出す助けになったのよ。
(PJ Harvey / SNOOZER 2007年12月号から引用)
ピアノの他にはフィードル、ハープ、バンジョー、ハーモニカなどの古風な楽器、ミニモーグ、メロトロン、オプティガンなどの古い電子楽器が使用されており、それが後の作品での使用につながっていったのだろう。
曲調は彼女らしくダークで内向的のものだが、歌い方が従来の作品とかなり違うので、事前にPJ Harveyのアルバムだということを知らなかったら、誰のアルバムなのかわからないだろう。
だがそれだけの変貌を遂げながら質の高い作品を生み出してしまうのが彼女の凄いところである。
素朴なヴォーカルと単純なピアノの調べと他の楽器のアンサンブルが素晴らしいDear Darkness、少女時代の精神的な不安定さを想像させるGrow Grow Grow、中絶や堕胎を扱っているのではないかと深読みされることもあるWhen Under Ether、彼女の故郷であるドーセットの風景を描写したWhite Chalk、猟奇的で狂気じみた叫びが強烈なThe Mountainなどがおススメの曲だ。
ピアノが主体だというとロックのリスナーからは敬遠されがちだと思うが、個人的には傑作だと思っている。


