流行に呆れていたミュージシャン

マネキンが着たグランジファッション普段着でロックをやっていただけなのに、その普段着がトレンドになってしまうという状況にミュージシャンたちは醒めた目で見ていたようだ。
その普段着や古着を有名ブランドが真似して作った商品が高額で販売されるという状況に呆れていた。

というより、皮肉を込めてgrunge is deadというTシャツを着たカート・コバーンを筆頭に、当事者の多くはグランジというブーム全般に嫌悪感を抱いていたという方が正しい。

マネキンが着たジャージとショーツが300ドル(3万円以上)という状況さ。俺たちは防寒着として着ていただけなのにな(笑)。
(Mono Men / レッジ・モリセット)

(恐らくアナ・スイというブランドの)シルクのグランジ風シャツに400ドルも金出してるヤツらがいるっていうから、もうジョークにしかなんないよ。
ま、バカを見るのはそいつら自身だ。
Kマートに行けば10ドルかそこらで売っているよ
(Pearl Jam / エディ・ヴェダー)

グランジなんて結局メディアのでっち上げだったんだ。
あげくに、パリのファッション界から400ドルもするネルシャツが現れるに至った。
なんじゃそりゃーと思ったね。
あんな馬鹿げたものは見たことがなかった。
俺たちが何年もの間、短パンをはいて、きったねえ服で演奏してたのは、それしか持ってなかったからなのにさ。

LAで初めてプレイしたときは、プレスに「格好がまるで浮浪者のようだ」って書かれた。
2年後、みんなに真似された。
それも金をかけてそういうものを買って着てるっていうじゃないか。
あんなものがファッションになるなんて異常だよ。
(Alice In Chains / ショーン・キニー ロッキングオン1997年1月号から引用)

大衆が流行という旗の下に集まる現象は、インディのパンク精神には嫌悪されるものだった。
当然、グランジ・ファッションもバカにされていたようだ。
カート・コバーンはグランジファッション流行前に、次のように歌っている。

流行なんて変わっていく
放り出して取り入れろ
体を毒で被わなくっちゃな
(Nirvana / Stay Awayの歌詞)

コーデュロイジャケットを着たエディ・ヴェダーまた、シアトル・シーンをネタに金儲けしている企業に対する嫌悪感も強かった。

(グランジは)凄く儲かる商品だったんだ。バンドは人形みたいなもの。音楽から金をむしり取ったようなものだ。
(コーデュロイジャケットを商品にされたPearl Jamのエディ・ヴェダー)

このように、当事者たちはアンチ流行主義者でグランジ・ファッションを否定する人が多かったのだが、ファッション雑誌にグランジ・ファッションが特集されても、このことが記事になることは残念ながら皆無だ。

理由は、グランジ・ファッションを売るのに都合が悪いから、ファッションしか興味がないから、そこまで詳しく調べていないから、といったところだろう。

ただ、Sonic Youthはマーク・ジャコブスのファッションショーでビデオ撮影を敢行しており、彼の製作したネルシャツなどを認める発言をしていることを最後に付け加えておこう。


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