Nirvanaの功績

ニルヴァーナの最大の功績はアンダーグラウンドの世界に光を当てた事だ。
(シアトルの写真家チャールズ・ピーターソン / クラシック・アルバムズ : ネヴァーマインドから引用)

ビルボードチャートNirvanaのNevermindは革命を起したアルバムと言われる。
しかし、世間一般ではグランジを流行らせたの一言で片付けられているのが非常に残念だ。
NirvanaのNevermindの大ヒット以降、何がどう変わったかというと、チャールズ・ピーターソンが言うように最も大きいのはインディ・バンドが注目されるようになったことだ。

Nevermindが大ヒットしたことでNirvanaの出所であるシアトルだけでなく、全米のインディ・シーンに注目が集まった。
当然、今まで無視し続けていたレコード会社やメディアも目を向けるようになる。

そのことにより80年代にメジャーレーベルやMTVから無視され続けたインディ・バンドや、90年代のバンドでも80年代だったら無視されたであろう音楽性のバンドがメジャー契約を獲得し、世界中で聞かれるようになった。
そして、しだいに80年代の産業ロック勢が失速し、80年代のメインストリーム(主流)とは対照的なオルタナティヴ(反主流)と呼ばれる音楽がヒット・チャートの上位にランクインされるようになった。

僕たちがこうして注目されることによって、他のアンダーグラウンド系のバンドが少しでも注目されることになれば、それでいいじゃないかと自分たちに言い聞かせているんだ。
そうでもしない限り、この状況(Nevermindの大ヒット)を受け止めようがないんだよ。 
(Nirvana / クリス・ノヴォセリック カート・コバーン・トリビューとから引用)

ニルヴァーナが道を開いてくれたおかげで、「すべては音楽のために」っていう、従来より理想主義的な考え方を持ったたくさんのバンドが、人気を得るようになったんだ。
「いや、こんなこともそんなこともやる必要なんかない、(カネではなく)いい音楽を作ることが最重要課題なんだ」っていうスタンスのバンドがね。
(Tool / メイナード・ジェームズ・キーナン ロッキングオン2001年3月号から引用)

Nirvanaをはじめとするバンドがそれまでの音楽をぶち壊して、全く新しい世界を切り開いたんだよ。
つまり、どこまで音楽として受け入れられるかっていう、その許容範囲を一気に拡げたんだよね。その結果、リスナーはいろんなタイプの音に耐えられるようになった。
(ベック Buzz Vol.18 January 2000から引用)

Nirvanaの出現は突然変異だったわけではなく、Sonic YouthやBlack Flagのような80年代にメジャーから無視され続けながらも、自己を見失うことなく活動してきたバンドが存在したからこそ生まれてきたのだ。

80年代のパンクの動きは地味で巨大だった。
そこから生まれたのがNirvanaだ。
でも、ニルヴァーナの力で1000万枚売ったんじゃない。
彼らも確かに凄いんだけどね。
過去10年以上の(メジャーから無視され続けてきたパンクの)蓄積が彼らの人気に繋がったんだ。
(Theoretical Girls / グレン・ブランカ)

Nirvanaの成功は素晴らしいことだったと言い切れる。
あの10年(アメリカのメインストリームからパンクが無視され続けた80年代)の全てを輝かせることになったんだ。
でも歴史家は(Nirvanaがブレイクした)その瞬間しか語れない。
彼らがどこから来たのか自然発生としか書けない。 
(Sonic Youth / サーストン・ムーア)

インディが注目されたとはいえ、レコード会社の”第二のNirvana捜し”や”トレンドで一儲け”的な思惑もあったのだろうし、インディ・シーンの中にもアルビニのようなメジャーを100%否定するインディ至上主義者がいたのも事実。
また、オーディエンスの中にも流行を追っかけているだけの”理解していない奴”が多数いた。

だが、流行とは無縁な音楽をやっていても正当な評価を受けることは可能なのだと多くのインディ・バンドに希望を与えたのも事実だろう。

そしてなにより、良質なインディ・バンドが世界中で聞くことができるようになったのは大きい。
あなたが好きなバンドの中にも、Nevermindの大ヒットがなかったら、あなたはそのバンドの存在すら知らずに人生を終えてしまっていたかもしれない。

日本に住んでいる身として、現在も地方インディが脚光を浴びやすい状態が続いていることはありがたい。
現在ではインターネットが普及し、USインディについて自力調査が可能になったが、メディアがある程度率先して追いかけてくれることにより、ある程度の情報は自動的に入ってくる。
こう考えると、我々は今でもNirvanaの恩恵を受けていると言える。

2000年代に入ると、カート・コバーンの自殺によりNevermindが過大評価されているとの声が多くなってきた。
過大評価論の中には「自殺してから人気が出ただけ」という事実とは異なるものもある。

Nevermindの音楽に対する個人の好みの問題はさておき、アンダーグラウンドやインディに注目を集めさせたという功績だけは忘れないでほしい。

Hyottokoをフォローする
GRUNGE ALTERNATIVE (グランジ・オルタナティヴ)の総合サイト
タイトルとURLをコピーしました