過去の遺物を復活させたオルタナ・グランジ
ファズを愛用したギタリストで最も有名なのは、云わずと知れたジミ・ヘンドリックスだ。
他にはブラック・サバスのトニー・アイオミ、レッド・ツェッペリンのジミー・ペイジも使用していたようだ。
ファズの誕生は、アンプやエフェクターが現在のものほど発達しておらず、歪み音が安易に出せなかった時代に偶然生まれたらしい。
それで、アンプやエフェクターが発達するにつれ、次第に表舞台から姿を消して行ったようだ。
しかし、上に述べたギタリストが出していた音に影響を受け、ファズに再び脚光を浴びせたのがオルタナ・グランジと呼ばれたバンドである。
彼らは、80年代に主流だった小奇麗な音ではなく”機械がブッ壊れた音”を求めたようだ。
代表的なのは、Nirvanaのカート・コバーンは勿論Soundgardenのキム・セイル、Dinosaur.JrのJマスシス、Meivinsのバズ・オズボーンたちだ。
Big Muff(ビッグ・マフ)
“Modhoneyの”SuperFuzz BigMuff”というアルバムをご存知であろうか?
スーパーファズ、ビッグマフ共にファズの名前だ。
そしてビッグ・マフこそが最も有名なファズである。
60年代後期、ビッグ・マフは現在のような良質のアンプがない時代に「出した音がどこまで持続するか」というニーズに応えたエフェクターだったらしい。
当時は、ディストーションという言葉すらなく、サスティナーと呼ばれていたようだ。
現在、主流なのは”現行モデルのオリジナル”と”ロシア製”だ。
ロシア製は初心者向きで比較的使いやすいようだが、現行モデルは非常に扱い難いらしい。
SUSTAINを5前後にすると和音が単音に聞こえてコード弾きが不可能になり、TONEの効き具合も異常で、VOLUMEのツマミによる音量増加量も無謀でアンプが心配になるほどだということ。
そんなじゃじゃ馬を使いこなしたギタリストを2人ほど挙げてみる。
まずはここでもカート・コバーン。
「Nevermind時のカート=BossのDS-1」というイメージが強いが、LithiumでのみBig Muffを使用している。
次に、Dinosaur Jr.のJ・マスシス。
彼の場合、Big Muffの二重にも三重にも重ね、ライヴ・ハウスから締め出されるほどの轟音を作り出していた。
何はともあれ、文であれこれ述べても分かりづらいのでまずは楽器屋で試し弾きする事をオススメする。
ちなみに、ヴィンテージを探す場合、歴史の長いビッグ・マフは「外見が違っても中身は同じ」とか「外見が同じでも中身が違う」ことがしょっちゅうあるらしいのでご注意を。
Big Muffを使用しているアルバム
You’re Living All Over Me / Dinosaur Jr
Dinosaur Jrの87年の2ndアルバム。
インディからのリリースなので、サウンドは素朴でうすっぺらいが、Bigg Muffによると思われるギターの歪みが半端じゃない。
それなのにメロディはスウィートで、ノイズとメロディを自然な形で融合させたと言われるのにも納得。
Jマスシスは特にライヴで延々とギターソロを弾き続けるというインディでも珍しいスタイルだった。
Big Muffの使用していたからというのもソロを弾き続けた理由の一つらしい。
Superfuzz Bigmuff plus Early Singles / Mudhoney
MudhoneyのBig Muffをタイトルにした作品。
SUB POP時代の初期のシングルとミニ・アルバムSuperfuzz Bigmuffを一枚にまとめたものだ。
これもギターの歪みが凄くてノイジーだ。
Big Muffの爆発的なエネルギーを味わうことができると思う。