夏目漱石”行人”の感想

この本はもう何年も前に読んだけど、最近読み直してみた。
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「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか」

文庫本の裏表紙にこんなことが書いてあるんだけど、俺にとっては嫌な言葉だ(苦笑)。

話は当時の結婚観批判のような形で始まる。
お貞さんと佐野の結婚は当人が1度も会わないまま決定する。
二郎が結婚決定前に二郎が一度佐野をどんな人か査定に行くのだが、自分の報告次第でお貞さんの運命が決まってしまうことに疑問を抱く。

「どうしてお貞さんが、そんなに気に入ったものかな。まだ会った事もないのに」
自分の結婚する場合にも事がこう簡単に運ぶのだろうかと考えると、少し恐ろしい気がした。

二郎の友人である三沢の恋話が次にくる。お貞さんとは対照的な内容だ。

二郎の兄は大学の先生で、嫁との仲がうまくいっていない。
それが原因で次第に狂人じみてしまったとの印象を受ける。

だが、最後まで読むとそれだけが原因ではないと思う。
結局、兄は頭が良すぎたのだ。
物事を単純に考えることができない。他人に対しても裏を疑ってしまい、二郎と嫁の仲まで及ぶ。
それ故、「死ぬか、気が違うか、それでなければ宗教に入るか」というところまで追い詰められてしまったのだろう。

兄はお貞さんを「宅中(うちじゅう)で一番慾の寡(すく)ない善良な人間」と評し、「幸福に生れて来た人間」と羨ましがる。
お貞さんは、俺に言わせれば言葉は悪いが「何事も深く考えない単純な馬鹿」だ。
でも、兄の気持ちはよくわかる。

結局、考えすぎずに思考を停止した人間が幸福でいられるということだろう。

コメント

  1. より:

    幸せの定義によると思う。
    知らぬが仏を幸せと呼ぶのか。
    たとえばインフォームドコンセプト

  2. より:

    コンセントです笑

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