1週間ぐらい前にこの本を読み終えました。
「末期癌で消え逝く命と、生まれてきたばかりの我が子」といった状況での話です。
末期癌との戦い、大切な人に生き延びて欲しいという思い、母親としての愛情、子育ての自身の無さ、生きていく上での心の弱さ、男の卑劣さ、等が描かれていて読み応えがあった。
強調して描かれてはいなかった気がするが、東由多加が最初に異常を訴えたとき、ガンセンターの予約をとっておきながら、連れて行かなかったことに対する自責と後悔の念は想像に難くない。
全体から感じられるのは苦痛。過去の回想シーンですらその虚しさゆえに苦しみしか感じられない。
そんな苦痛だらけの中で、母親の愛情を感じさせる箇所はとても温かい。
高校の国語の授業で、「情報空間の肥大化」という説明文が扱われたことを思い出した。
テレビのニュースで、「毎年、癌で何万人が亡くなっています」
こういわれても、リアリティなど感じられないということだ。
そんな肥大化した情報よりもこの本の方がリアルである。
人間の命なんて客観的に見れば小さなもの
普段はこんな卑屈な考えを持っているが、この本を読むと「生きるとは何か?」考えざるを得ない。