過去の呪縛から逃れられないビリー・コーガン

コンニチハ、ビリー・コーガンです。

「サイアミーズ・ドリームは最高の作品だ」と言われたら、僕の中に湧く感情があって、それは、「サイアミーズ・ドリームが最高」と言う言葉の中には、もうあんな作品は二度と作れない、君があんな風に注目されることはもう二度とない、という意味が込められているんじゃないかということ。
再び偉大な音楽を作るということを僕のファンが信じなくなったとき、両者の間の会話は、まったく異なるものになる。
つまり今のモチベーションに興味を持ってもらえなくて、「なんで昔の曲は演奏しないんだ」って言われる始末だし、今はもう優れたアーティストでもないのに、やるべきことをやらない厄介な人だという見え方になってしまうというね。(ビリー・コーガン ロッキングオン2012年8月号)

2000年のSmashing Pumpkins解散後のビリーについて書こうと思いますが、手短にいうと過去の名作Siamese DreamとMellon Collie and the Infinite Sadnessとの比較との闘いの中で迷走していったということでしょうか。

過去の名作との比較は再結成バンドだけではなく、ずっと続いているバンドにも起こることだと思います。
「あのアルバムを超えるアルバムを作ることができないでいる」みたいな評価をされることもあるでしょう。
多くのバンドはそういう批判と折り合いをつけて上手いこと活動を続けていると思います。

ビリー・コーガンを語る上でしばしば自意識過剰という言葉が用いられますが、ビリーの場合は何をやっても世間から過去の名作と比較されるという意識が強すぎたと思います。
Siamese DreamやMellon Collie時代のような音楽を期待する声と新しいことをやりたい自分の願望との板挟み状態で苦しみ、インタビューで毎回のように愚痴っている印象です。

解散後に始めたZwanでは意図的にスマパンサウンドから離れたものの上手くいかず、ソロアルバムではニューウェーヴ的なものを制作。
今にして思うと迷走していたと思います。
スマパン再結成後は昔のスマパンらしさを残しながらも新しいことも取り入れて、バランスよくやっていこうと迷走していた印象を受けます。

2012年のOceaniaが傑作だったんでようやくビリーは折り合いをつけることができたのかと思われましたが、やはりダメだったようです。

そして2014年には思い切った行動に出ます。
Monuments to an Elegy(哀歌の記念碑)という過去のスマパンを意識したアルバムをリリース。
その意味合いはこのアルバムを最後に今までやってきたロックバンドとしてのスマパンとの決別でした。
ひねくれた見方をすれば過去のサウンドを期待するファンに対する皮肉や嫌味でしょうか。

その後、Day For Nightというエクスペリメンタルなアルバムをリリースし、新しい道を切り開こうとしました。

このアルバム(Monuments to an Elegy)は、みんながスマッシング・パンプキンズをどのようなバンドだと思うか、ということをべースに作られた作品だからなんだ。

モニュメンツというのは、みんなが思うパンプキンズというバンドの音が鳴っているアルバムなんだ。
みんなが思う僕がここにいる。
そして、同時にこの作品はスマッシング・パンプキンズの葬式なんだ。

(Day For Nightは)モニュメンツが光なら闇のような、もっとエクスペリメンタルで、もっとモダンなアルバムになると思う。
ここまでの僕のギター・サウンドは、良かったとは思うけど、もう過去のものだと思うんだ。
だから僕にとってはモニュメンツが僕のある種のギター・ロックの終わりであり、次のアルバムでは、もっと危険な心で音楽を作る場所に戻りたいと思っている。
それが成功すれば成功だし、もし失敗に終わればそれまでだ。
でも僕にとってはそういうアプローチで音楽を作る以外の道はないんだ。
僕はエクスペリメン卜することから音楽を始めたから、その場所に戻るというのは意味が成立する。

モニュメンツは、非常に心地好いもので、そういうサウンドのアルバムは、とてもポジティヴなものをもたらす。
でも、変化はもたらさない。
なぜなら変化というのはラジカルなものだから。
それは、暴力的で居心地の悪いものだ。
気に入ってもらえれば素晴らしいと評価されるし、気に入らなければゴミ扱いだ。(ロッキングオン2015年3号)

今まで積み上げてきたものを壊すというAdoreのようなことをするとほのめかしていましたが、気が変わったようでDay For Nightはリリースされませんでした。
まさに迷走。

理由はよくわからないのですが、このインタビューにヒントがあるかもしれません。
時期的には上のロッキングオンよりも前だと思いますが。
Billy Corgan: ‘The Smashing Pumpkins shouldn’t be an arty band anymore’
Corgan tells NME: ‘Our next album will kick people out of the way’

「ポップ(Monuments to an Elegy)を作ってから、奇妙で芸術的なレコード(Day For Night)を作ろう」と思っていた。しかし、「モニュメント」リリース後に「Day For Night」のデモを聞きなおしてみて、The Smashing Pumpkinsはもう芸術的なバンドであってはならないと感じた。

Smashing Pumpkinsはポップバンドとして生きることを決意したのでしょうか?
その後はイハの復帰とアコギバラードのソロアルバムへと展開していきました。

こうして振り返ってみるとやりたいことや方向性がコロコロ変わり、いつでもどこでも迷走してきたと思います。
愚痴っぽくて自意識過剰で面倒くさい人だと思いますが、それが魅力の一つかもしれませんね。

現在はイハ復帰後の第2弾アルバムを制作していると思われますが、ちょうど新曲が2曲発表されました。
これを聞く限りでは昔に戻るということはせずに、エクスペリメンタルなDay For Nightほどではないにせよリスナーに挑戦状を叩きつけるような感じですかね。
Cyrは間違いなくリスナーを選別すると思います。

THE SMASHING PUMPKINS – Cyr (Official Music Video)

The Smashing Pumpkins – The Colour of Love (Official Audio)

いつでも迷走してきたんで次の展開が読めませんが、今後に期待しています。
次こそは過去の作品からの呪縛から解放されるのでしょうか?

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