Slint 17曲(You Tube)
Slint (スリント)の概要
Slintの知名度は高くなく、リリースした曲は17曲だけなのだが、いわゆるポスト・ロックと呼ばれる音楽の原型となったロック史上に輝く重要バンドといえる。
Slintが存在していなかったらMogwai、Godspeed You! Black Emperor、Sigur Rosといったバンドは存在していなかったかもしれない
ノイジーなギターと変拍子、強弱の激しい複雑な曲構成、ヴォーカルは入っているが呟き声のようなもので主役は楽器隊といったところが音楽的特徴だ。
ジャズやファンクの影響を指摘されることもある。
それらから生み出される猟奇的、狂気的な音楽には圧倒されるだろう。
Slint結成以前、ギターのブライアン・マクマハンとドラムのブリット・ウォールフォードはSquirrel Baitというハードコア・パンク・バンドで活動していたこともある。
Squirrel Baitには後にBastroなどで活躍するデヴィッド・クラブスも在籍していた。
Slintそのものは1986年にケンタッキー州ルイビルで結成された。
1987年にはスティーブ・アルビニの下で1stアルバムTweezのレコーディングを行い、1989年に自主レーベルからリリースされた。
Tweezはインディ・レーベルのTouch And Goから注目され、Tweezはタッチ・アンド・ゴーから再発され、次のアルバムもTouch And Goからリリースされることになった。
1990年に2ndアルバムSpiderlandの制作に取り掛かり、スティーヴ・アルビニではなくブライアン・ポールソンの起用を決断した。
レコーディング開始前にマクマハンが交通事故で命を落としかけたことが暗い影を落とし、インディで有名なTouch And Goと契約したことでプレッシャーにも苦しめられた。
そのような緊張感の中でマクハマン自身の不安や心の闇を歌詞にして(主に成人になることへの不安らしい)レコーディングしていたが、19歳の彼はGood Morning Captainという曲のレコーディングでI’m sorry and I miss youと叫んでレコーディングを終えた直後に精神的に崩壊してしまい、翌日に病院でうつ病と診断されそのままバンドを脱退。
Slintは2ndアルバムSpiderlandをリリースする前に終焉を迎えることになってしまった。
SlintのSpiderlandというアルバムは素晴らしいレコードだ。
まだロック・ミュージックに感動できる人は聞き逃してはならない。
10年後には新たな時代を切り開いた画期的なレコードとされているだろう。
スティーヴ・アルビニ / 1991年3月 Melody Maker誌 Spiderland by Slint: the album that reinvented rockから引用
また、日本のライターの大鷹俊一さんはアルバムレビューで次のように書いた。
ピクシーズをもっともっとアコースティック風にして、シド・パレットの出口ナシの世界をさまよっているといった所だと言えばどうかな。
いずれにしてもここ最近では珍しいほど純正の神経症のアーティストがここにはいる。
久々のパラレル・ワールドの超大物。
20年後には大変なコレクターズ・アイテムになっていること間違いなしの一枚だ。
クロスビート1991年6月号
かくして2人のレビューは現実のものとなったわけだが、当時は上記のような高評価もあったものの、バンドが解散したためツアーは中止となり、プロモーションもままならず、当初の売り上げは数千枚と推測され、歴史に埋もれた名盤となってしまった。
しかしMogwaiなどのSlintの影響下にあるポスト・ロックと呼ばれたバンドが台頭するにつれ、メディアで取り上げられることが多くなり、知名度と評価を上げていき、ポスト・ロックと呼ばれる音楽の原型といわれるほどになった。
私もそれでこのバンドを知ることができた一人だ。このような特殊な経緯をたどったバンドとアルバムは他に存在するのだろうか?
解散後メンバーはSlint以外のバンドで活動し、もっとも有名なのはTortoiseやビリー・コーガンのZwanなどで活躍したデヴィッド・パホだ。
解散から15年が経った2005年、Mogwaiがキューレーターを務めたAll Tomorrow’s Partiesというフェスで再結成を果たした。
その後は単発的に再結成ライヴを繰り返し、2014年にはSpiderlandのボックスセットがリリースされた。
それ以降は活動していない。