Steve Albini (スティーヴ・アルビニ)

Steve Albini
Steve Albini

1980年代から自身のバンド活動と並行して様々なインディ・バンドのレコーディングに関わってきた重要人物。
主なところはNirvana、Jesus Lizard、Pixies、PJ Harvey、Breeders、Slint、Urge Overkill、Superchunk、Pussy Galore、Tad、Neurosis、Helmetなど。
クレジットされていない作品も多く本人の記憶もあいまいなようだが、関わった作品は1500枚以上といわれている。
自身のバンド活動についてはBig Black (ビッグ・ブラック) Rapeman (レイプマン) Shellac (シェラック)を読んでほしい。

メジャーレーベルがバンドの利益を搾取するシステムを否定するインディ主義者として知られているものの、メジャーレーベルに所属しているバンドの仕事を引き受けないというわけではない。
若いころは「スタンスが気に入らないバンドとは絶対にやらない。」と発言したこともあったが(クロスビート1992年6月号)、基本的にメジャーだろうとインディだろうと、自分が好きな音楽であろうがなかろうが依頼があれば引き受けている。

アルビニはプロディーサーと呼ばれることを嫌う自称レコーディングエンジニアである。
音楽に関することの決定権はバンドにあるべきで「プロデューサーやエンジニアが自分の考えを押し付けるように”君たちの音楽に関する考え方は間違っている”などということはとても失礼なことで許しがたいこと」と考えており(Sound & Recording Magazine 2005年11月号)、アドバイスを求められない限り口を挟まずにエンジニアとしての仕事に徹するというスタンスをとっている。

自分のプロデュース、エンジニアリングのスタイルに、彼らの方をはめこもうなんてことは一切してこなかった。
若いバンドがプロデューサーによって独裁されてしまったケースは、何度も見てきたからね。
僕のプロデュースのやり方は、何事もコントロールしないというものだ。

・・・

僕はプロデューサーと呼ばれたくないんだも
どうもその呼称には、音楽業界の手先といったニュアンスがあるからね。
エンジニアならいい。
実際、僕の仕事はかなりテクニカルな部分なんだ。
アレンジや曲作りには全然口を挟まない。
ただ、バンドが望む音を出せる環境を用意するだけだ。(スティーヴ・アルビニ / クロスビート1992年6月号)

アルビニのサウンドの特徴としては、「バンドがスタジオで演奏している音」をそのまま忠実に録音するところにあり、「生演奏を聴いているかのよう」とか「スタジオの空気感まで再現されているかのよう」といった印象を受ける。

彼が手掛けたアルバムは、どれもすごく生き生きとしてて、すごくエキサイティングで、とにかくむき出しのナマの音がしたの。
スタジオでプロセスを経た音とは思えなかったわ。
まるでバンドのライヴ演奏を目の前で見ているようだった。
ライヴの雰囲気がそっくり再現されていて、私もそういう音が欲しかったのよ。(PJ Harvey ロッキングオン1993年6月号)

そのようなサウンドを生み出すレコーディング技術の一つにアルビニ独特のマイクの設置方法があるようだ。
エフェクトに頼らずマイキングで空気の音さえ支配し、時に生々しく、時に幻想的な音に仕上げているらしい。

プロデューサーはアレンジとか手伝うのに彼は何もしないのよ。
やるのはマイクのセットだけ。
それも変なところばかりにセットするの。
壁や窓や天井など何メートルも離れたところばかり。
彼はいい雰囲気を作って最高のテイクを録っちゃうの。(Reeling Whith PJ Harvey

(Nirvana In Uteroのレコーディングにおいて)ブレントは、デイヴのドラム・キットが痛々しいほどマイクだらけにされていく様子を一心に見つめていたのを回想しているが、これこそ、カートが最も感銘を受けていたアルビニの録音テクニックだった。
ドラムだけで30本ものマイクが使われたという。
「古い大型のドイツ製マイクが、床、天井、壁と、そこら中一面にテープで貼り付けられたんだ」と、カートはジョン・サヴェージに語っている。(ロッキングオン2002年4月号より)

生演奏を忠実に再現するこということは、逆にいえば派手な装飾を嫌うということで、エフェクトの使用は最小限にとどめられる。
また、ミキシングで音を加えることも快く思っていないようだ。

その他のアルビニの特徴としては、「コンピューターで録音する方がオレにとっては非効率」(スティーヴ・アルビニ / Sound & Recording Magazine 2005年11月号という名言を残すほどアナログレコーディングにこだわりがあり、音楽を聴くことに関してもレコード盤を好むアナログ主義者である。

また、金銭的に余裕のないインディバンドのために低予算で仕上げるという概念、使命感が根底にあり、レコーディングは短期間でスピーディーに行われる。

僕は1枚のレコードを出来るかぎり低予算で仕上げる。
そうすることによって、レーベルの抑圧からバンドを解放するためだ。
バンドがレコーディングに金をかければかける程、会社の発言権は増していくのが普通だからね。
「これだけ使ったんだから、言うことを聞いてもらうぞ」というわけさ。
だから僕は、バンドとレーベルの関係を自由にするために、全てを低予算で賄えるよう努力する。(スティーヴ・アルビニ / クロスビート1992年6月号)

アルビニは仕事が早いのよ。
わたし自身もせっかちだから、そういうやり方で仕事がしたかった。
それに、作業が長引きすぎると、どこか台無しにしてしまうこともあり得ると思うの。
わたしはいくらでも凝ったことをやりかねないんだけど、アルビニはそういうことを許さないの。
「いや、それでいい。そのままにしておくんだ」って断固反対されるわ。
わたしなら、もっとパーフェクトなテイクを録ろう、もっと、もっと、と延々といじり続け、ますますヘストなサウンドから遠ざかっていったかもしれない。(PJ Harvey ロッキングオン1993年6月号)

アルビニのレコーディング・テクニックを特集した昔の日本の雑誌としてはSound & Recording Magazine 2005年11月号の他にGuitar Breakers Vol.4(ヤングギター2004年2月号増刊)があるので興味のある方は古本で入手していただきたい。


また、NirvanaのIn Uteroの20周年記念ボックスセットのブックレットに掲載されたアルビニがNirvanaに送った書簡には彼の哲学が記載されているので興味深い。
ニルヴァーナ、『イン・ユーテロ』制作でスティーヴ・アルビニが送ったFAXが公に
Read the incredible four-page proposal letter Steve Albini sent to Nirvana

エンジニアとしてのキャリアは、70年代に自身のバンドの音源を録音するところからはじまり、自身のバント活動と並行する形でエンジニア業を営んでいたようだが、自身のバンド活動が停滞するにつれ徐々にエンジニア業に比重が置かれるようになっていったようだ。
80年代の傑作といえばPixiesのSurfer Rosaだろうか。
このアルバムのドラムのスネアの音にはカート・コバーンも感銘を受けたようだ。

アンダーグラウンド界隈では知られた存在だったが、90年代にアルビニの知名度を良くも悪くもメインストリーム規模で高めたのはNirvanaのIn Uteroだろう。
このアルバムについては制作開始前とアルビニがミックスを終えた後のリミックス、マスタリングに関してゴタゴタがあったのだが、10年以上前にブログで記事にしたのでリンクを貼っておく。
いつか分かりやすくまとめるかもしれない。
スティーヴ・アルビニはNirvanaをどう思っていたのか?
NirvanaのIn Uteroのサウンド(20周年記念盤はリリースされるのか?)

アルビニ・サウンドには(特にPJ HarveyのRid Of Meのようにヴォーカルを埋もれさせてしまうことについて)賛否両論があった。
エルヴィス・コステロ、スティーヴ・アルビニを「プロダクションについて何もわかってない」と批判
NirvanaのIn Uteroはアルビニがミックスを終えた音源について「ヴォーカルが聴こえない、ベースラインも聴こえない、歌詞が何を言っているのか理解できない。(カート・コバーン クロスビート1993年10月号)」とのことで、メンバーの意思で2曲はリミックス。、その他の曲もマスタリングの段階で大幅にサウンドが変更されている。

1997年にはエレクトリカル・オーディオという自身のスタジオを購入し、2023年現在までここを拠点に活動することとなった。

1997年以前からだがアルビニのスタンスとして自身がレコーディングした作品の印税を受け取るのは倫理的に間違っており、ギャラはエンジニアリング料のみ受け取るというのがある。
大ヒットが見込まれていたNirvanaのIn Uteroでもそのスタイルを貫き通した。

ニルヴァーナとの仕事でも僕は基本的なやり方を守りとおした。
払ってもらった金にはきちんと応える。
音楽業界の一般的な決まりと違う。
例えばプロデューサーやエンジニアは印税を受け取るのが普通。
でも僕は倫理的に考える。
数週間ばかり働いただけでずっと金を払ってもらうなんてありえない。
あるレコードのために働いたらその時間の分だけ払ってもらえばいい。
それ以上のことをバンドに求めない。
音楽業界の常識とは違うらしいけれど、大工や配管工なら働いた時間の分だけ払ってもらうのは当然のこと。
そうやって20年もやってきた。
ボーナスをもらってもいいかな(笑)。(スティーヴ・アルビニ / Sonic Highway

このように40年以上の長期にわたり自身の哲学にしたがって数多くのインディバンドの作品を格安で手がけてきたが、やはり金銭的には苦しいこともあるようだ。

この建物(エレクトリカル・オーディオ)の支払いは月300万円。
毎日数十万の売り上げは必要ってことさ。
何度か破産しそうになって家を売ったりギターを売ったり。
ここ半年くらいは金の心配がなかった。借金もしなかった。
でも最近またきつくなってきた。
トランプは暇つぶしだけど副収入減でもある(アルビニはポーカーの世界大会で2度優勝している)。
それでスタッフの給料を払ったこともある。
スタジオ経営もある意味ギャンブル。(スティーヴ・アルビニ / Sonic Highway

2023年現在、アルビニのギャラは1日900ドルとなっているので興味のある方はコンタクトをとってみるのもいいと思う。

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