Pearl Jamと成功

Pearl JamもまたNirvanaのNevermindと同様に、91年にリリースした1stアルバム”Ten”の急激な成功により混乱していった。
結果的にPV製作、インタビューをはじめとするプロモーション活動を拒否するようになった。
それゆえこの時期にリリースされた音源のオフィシャルPVは存在しない。

また、チケットマスターとの闘いも有名な話だ。

ロック・スターになることは大変じゃないんだ。
女遊びをしたり、Tシャツやコンサート・チケットにむちゃくちゃな値段をつけてファンから金を巻き上げたりってのは簡単だよ。
これはゲームをやってるようなもんだからね。
難しいのは、こういうゲームをやめようとすること、誰にでも公平に尊敬の念を持って接しようとすることなんだ。
(Pearl Jam / エディ・ヴェダー)

カートがPearl Jamを「グランジ産業に便乗したバンド」と酷評したことで両バンドは対立した状態だったが、後にある程度は関係が修復されたらしい。
しかしカートは自殺してしまい、そのことはエディ・ヴェーダーにもショックをあたえる。
やはり、突然の成功により世代の代弁者に祭り上げられるという似たような立場にいた者として、思うところがあったのだろう。

俺は、自分が一番に死ぬものと、ずっと思ってたんだ・・・
何でそう思ったのかはわからないけど、ずっとそんな気がしてた。
べつに俺は、あいつ(カート・コバーン)と日常レヴェルでの知り合いってわけじゃない・・・
むしろそれには程遠かった。
なのに、ある意味じゃ、あいつがいないのに俺がこうして生きていることが間違っている気さえする。

あいつがいなくなっちまったってことを本気で信じるのは凄く難しい。
今もそこにいるかのように、俺はあいつの話をしてる。
考えがまとまらない。
どうにも訳がわからないんだ。

冗談じゃねえ、なんだってんだ!
どいつもこいつも寄ってたかって、あいつの死は必然だったとかぬかしやがって・・・
あいつにとってそれが必然だったんなら、こんな状況が続けば俺にだって必然になるだろうよ。

最初に(カート・コバーンの死を)知ったとき、俺はワシントンDCのホテルの部屋にいて、その場をズタズタに引き裂いてやった。
それから、その残骸の中に座り込んだ。
なんとなく落ち着いたんでね。
なにか、その瞬間は俺の世界みたいな感じがしたんだ。
(エディ・ヴェダー クロスビート1994年12月号から引用)

94年にリリースされた3rdアルバムVitalogyは、カートに直接関係した曲はないとしながらも、「お前ら(企業)のためにやってるんじゃねえ!」と歌っていると思えるNot For You、プライバシー侵害に対するPry,To、世代の代弁者拒否を宣言したCorduroy、カートのことを考えずにはいられないImmortalityなど、意味深な曲が収録された。

またこの頃の作品は、難解で実験的な方向に進み、意図的に売れないアルバムを制作していったとしか思えないような内容となった。

(2006年に)これまでを振り返ってみると、ソングライターとして一番ハードだったのは3、4枚目の頃でね。他人の期待にがんじがらめに拘束されて自由を奪われてしまったかのように感じたんだ。
まさか自分の言葉があれほど大勢の人々の耳に届くとは思ってもみなかったわけで、突如プレッシャーを感じ始めた。
そのプレッシャーを処理する方法をできるだけ早く見つけ出さないと、破滅的な結果が待ち受けているんだよ。
(エディ・ヴェダー クロスビート2006年6月号から引用)

しかし、98年にリリースされた5thアルバムYieldの頃には、心境に変化が生じ成功に上手く対処できるようになったのか、インタビューを積極的に受けるようになり、PVも製作した。

俺たちに残されていたオプションっていうのが「俺たちで音楽をプレイするって以外、余計なもの(インタビューやPV製作など)はとりあえずまとめて切り捨ててみよう」。だったのさ。
それ以前より遥かにそのひとつひとつの問題に神経を集中できるようになったんだ。
大部分のまやかしや余計なものは消滅したんだ。
(ストーン・ゴッサード CROSSBEAT1997年2月号から引用)

このように、Pearl Jamはビジネス的なプロモーション活動から距離を置くことで98年以降、成功と向き合うことが出来るようになった。
98年といえばブームとしてのグランジは終焉を迎えており、騒ぎは収まりつつあったことも影響しているだろう。
また、エディ・ヴェダーはカートと違いドラッグとはあまり縁がなかったこともショウ・ビズの世界で生き残れた要因かもしれない。


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